【6月17日号】 「被災地では、今、行政職員の確保に悩んでいます。数十年分の業務があり、予算が付いていても、現実に執行する職員がいなければ復興は進みません。職員復興なくして自治体復興なし、自治体復興なくして地域復興はないと考えます。(中略)被災自治体は、一部、前倒しで職員を採用するところもありますが、将来負担を考えればできるだけ応援職員で乗り越えたいところです。一方で支援自治体も自らの業務量が増えていますから、現役職員の派遣は厳しいのです。今は、解決策がないままに時間が過ぎ、職員に過度な負担を押し付ける危険性が高まっています。そこで進められているのが、被災地での任期付き職員の採用やOB職員の活用です。しかし、私は被災自治体には若い現役職員や大学院生を派遣するのが良いと考えています。そして、OB職員を中心とした任期付き職員については、元の自治体で増大した業務に対応するのです」(地域防災最前線(15)「行政の広域連携(3)」)
【6月20日号】 「自民、公明両党が今国会での提出を目指している道州制推進基本法案が暗礁に乗り上げている。与党が公表した法案の素案に対し、各地方団体が相次いで反対や懸念を表明。そうした声を踏まえ、与党内で法案の修正作業が行われているが、今国会の会期末が26日に迫る中、『党内調整もままならない中で法案の提出は無理』(六団体幹部)との見方が広がっている」(六団体「道州制法案の行方は…」)
【6月18日号】 保護者の所得格差による進学格差が拡大していることは、常々言われているが、それでも小林雅之東京大学教授らによる研究結果は、衝撃的と言っていい内容だ。2006年の調査で、国公立大学への進学率は、どの所得階層でも10%前後だったのに、12年調査では400万円以下(7.4%)と1050万円以上(20.4%)との間に3倍近い差が生じたという。低所得層への進学機会提供という国公立大学のミッション(使命)が揺らいでいることが、はっきりと見て取れる。これでもわれわれの社会は、若者に公平な競争環境を用意していると言えるのだろうか。
【6月21日号】 筑波大学附属小学校(東京都文京区)が都内で、児童1人に1台のタブレット情報端末を持たせた公開授業を行った。CG動画を活用するなど情報通信技術(ICT)の特性を生かした授業が展開され、児童が生き生きと授業に参加していたのが印象的。教育現場へのICT導入は急速に進んでいるが、「なぜ授業でICTを使うのか、使うと子供たちはどのようになっていくのか、教師は根源的な部分を問い続けなくてはいけない」(授業後の検証作業に参加した藤森裕治信州大学教授)のも事実。今後も各地で、試行錯誤が続きそうだ。
【6月18日号】 特集「多様化する保育所と経営」29回目は、「多子世帯対策、保護者の声などをめぐって」と題し、第2子以降の保育料に関する国や自治体の取り扱い、保育料の徴収状況、保護者の所得状況─などにスポットを当てる。「応能負担か応益負担か」「使用料か負担金か」といった保育料の性格も、額の設定に影響する重要なポイントだ。「進言」は天理よろづ相談所病院理事長・横山一郎氏の「医療に祈りを」。祈りや宗教は、科学に基づく現代医療とは相いれない存在と考えられてきたが、最近、医療における祈りの効果が指摘されているという。精神的な存在である人間を癒やすのは、科学ではなく人であるということに気付かせてくれる。「インタビュールーム」は、社会福祉法人シンフォニー(大分市)理事長の村上和子氏。同法人で働く知的障害者らは全員、家やグループホームから公共交通機関で通っているという。親による送迎が当たり前の時代からのチャレンジ。自力通勤により自信が付き、地域住民と触れ合えるのが大きなメリットだ。
【6月21日号】 認知症高齢者の増加が著しい。しかし、近年新たに認知症に関するさまざまな知見が登場。「手をこまねいている時代ではない」と、デイサービス事業経営者の山本茂夫氏が巻頭言で訴えている。医療事故調査のあり方について議論してきた厚生労働省の検討部会が先月、議論の取りまとめを行った。これに基づき厚労省が法改正などを進める予定。紆余(うよ)曲折の末、調査制度がようやく実現に向かいそうだ(特集「医療事故、調査制度創設へ」)。4月から定期予防接種となったばかりの子宮頸(けい)がんワクチンについて、厚労省が積極的な接種勧奨を控えることになった。疼痛などの副作用が報告され、一部の保護者らが接種中止を求めていた。副作用の頻度は高くないとされるが、安全性に関するより確実なデータが出るまでの過渡的な措置で、保護者や自治体の混乱も予想される(「子宮頸がんワクチン勧奨控える」)。「地域を支える」は愛媛県の多機能型就労支援事務所「ひだまり工房」。「障害者個々の適性に合った仕事を」と、仕事内容が異なる作業所を4カ所運営している。さらに、障害者が助け合って自立生活できるグループホーム立ち上げも計画中で、夢は広がる。
【6月18日号】 今回の「私の苦心」欄は、山梨県の公認会計士が寄稿。十数年前から県の監査委員事務局で非常勤嘱託を務めるが、「借入金を資本の部に算入するような独自の会計基準」に驚かされたという。現在では複式簿記が導入され、改められたそうだが、企業会計との大きな違いとして「公会計に減価償却がないこと」を挙げ、減価償却が実施されないので固定資産が耐用年数に達しても買い替え資金を用意できないという問題点を指摘。「もっと早く複式簿記を導入し自己金融能力を高めるべきではなかったのか、悔やまれます」と語る。アベノミクスで国土強靭(きょうじん)化政策が唱えられている今、「将来の更新等費用も考慮に入れた社会資本投資の在り方」を本気で考えるべきだ、との主張は説得力がある。
【6月21日号】 巻頭言では、資産評価政策学会会長の三橋博巳氏が「ABLの可能性」を分析している。ABL(動産・売掛金担保融資)とは、企業が保有する在庫や機械設備、売掛金など債権を担保とする融資手法を指し、担保の適切な評価機関が整った米国では、低リスクの融資方法として確立されている。日本の金融機関はもっぱら企業の土地を担保に融資しているのが現状だが、日本企業の売掛金と在庫資産の合計は約297兆円と土地(約186兆円)よりも大きく、ABLが活用できれば中小企業を含め今後の有効な資金調達方法になり得るという。今後は「評価人の人材育成や評価機関の在り方の検討が必要」と指摘しているが、注目される論点といえよう。「私の苦心」欄では、千葉県税理士会会長が税理士制度について解説。現在は弁護士、公認会計士に「税理士資格」が自動的に付与されているが、これは大戦直後のシャウプ勧告に基づいて税理士制度が発足した時、税理士が存在しなかったため弁護士などを登用したのが、制度として残ったものだ。これに対し税理士会としては、弁護士には会計学関連科目、公認会計士には税法関連科目をそれぞれ義務付けるよう法改正を目指しているという。社会経済が複雑化する中で税理士の職務も専門化してきており、必要な措置と感じられるが、業界間の線引き論議の側面がないでもない。ご本人も「50年後の業界のため、若い人に魅力ある業界にしていくために」と語っておられる通り、広い視野に立ち、国民の役に立つ税理士制度にしていくことを期待したい。ところで、政府の月例経済報告に関する記事は今回から、報告書から転載している前月との比較表に「上向き」などの矢印を付け、分かりやすく改善した。
【6月17日号】 「年末に向けて1ドル=105円か」と題して、今年後半の円・ドル相場について解説した記事を載せた。同記事は「昨年11月から始まった円高調整の動きが、今、踊り場に差し掛かっている。安倍政権の経済政策『アベノミクス』がキーワードとなり、『黒田日銀』の新しい金融緩和策が世界の投資家、投機家を元気づけたこの期間、円は1ドル=80円から103円台まで約28%下落し、一時1ドル=103円73銭(5月22日時点)までドル高・円安が進んだ。しかし5月23日の日本株の急落を機に、リスクオフ(リスク回避)の動きが世界的に拡大し、為替市場では円が安全通貨として買われたため、6月7日には1ドル=94円98銭まで急騰、4月4日の日銀の新金融緩和策発表時の水準まで逆戻りした。当局としては、アベノミクスを成功させるため、その象徴とも言える円安をここで終わらせるわけにはいかないはずだ。そのための年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)によるPKO(政府機関の株価維持操作)であり、運用方針の変更を急いで発表したことも円安の火は消さないとの覚悟とすれば納得できる。併せて、13年後半には米景気の上昇を背景にしたドル高要因もあろう。円安のスピードは緩やかなものになるかもしれないが、今後1カ月程度は1ドル=95〜100円で推移し、その後100円以上で安定した円安が続き、年末に向けて105円を目指す展開になると筆者は予想している」としている。
【6月20日号】 「強硬姿勢から対話再開に転換」と題して、最近の北朝鮮情勢について分析した記事を掲載した。同記事は「北朝鮮は最近対話姿勢に転じたが、6月12日に予定されていた南北当局者会談は、首席代表のランクをめぐる見解の相違で中止された。朝鮮半島で一体何が起きているのだろうか。南北双方が互いに『相手は追い込まれているのだから、先方が譲歩すべきだ』と考えたからである。韓国は『米中韓の政策協調で、北朝鮮包囲網が進んだため北朝鮮が対話を提案した』と考え、北朝鮮は南北対話が進まないことで国内の批判にさらされている朴槿恵大統領率いる韓国の政権が譲るべきだとし、双方が譲ることはなかった。南北間の協議がうまくいかないのは、双方が自尊心を第一に考えるからだろう」としている。