【7月1日号】 「岩手県の防災教育にずっと関わってこられた群馬大大学院の片田敏孝教授は、死者の年齢構成比と人口構成比を比較して、岩手県の義務教育世代の子どもたちの死亡率が著しく低いことを指摘しています。私は、このグラフを見て『子どもたちの心の中の堤防が命を守った』と直感しました。目には見えないけれども、津波から命を守る心の中の堤防があったとしか思えません。地域防災力を高めるためには、学校と子ども・保護者の防災教育を充実させるとともに、地域住民も参加して、例えば学校区ごとの防災計画を作成したり防災訓練を行ったりしてはどうでしょうか。子どもたちの前では、保護者も地域住民も一所懸命になりますから、大人だけの訓練よりも効果が高くなります」(地域防災最前線(17)「地域防災力の向上を目指して」)
【7月2日号】 「大学を卒業しても必ずしも就職に結び付くわけではない。大学教育の一体何が問題なのか、学生や雇用者のニーズに対して大学が何をすべきなのかを議論したい」─。司会の丸山文裕広島大学教授の発言で幕を開けた、日本高等教育学会の公開シンポジウム。テーマは「今、大学教育を考える─職業との関連から」。職業との接続を意識して、大学教育が大きく変化を迫られていることが浮き彫りとなったシンポの模様を、教育ジャーナリストの渡辺敦司氏が詳しく紹介している。
【7月5日号】 校長はじめ学校管理職必読の「教育法規あらかると」。今号は、成立したばかりの「いじめ防止対策推進法」を取り上げている。同法の内容を見ると、これまで文部科学省の通知などで示されていたものがほとんど。このため、有効性を疑問視する向きもあるが、筆者の菱村幸彦氏は「法律には法的拘束力があるので、単なる指導・助言である通知とは、法的効果が基本的に異なる。つまり、学校や教職員が本法を順守しない場合、法令違反として、その法的責任の追及が可能となるわけだ」と明快に解説している。
【7月2日号】 岡山市は今年、在宅介護の分野に特化した総合特区の指定を受けた。現行制度では要介護度が改善すれば事業者の介護報酬が減るが、逆に増やすことで質の向上を目指すいわゆる成功報酬制度をはじめ、高齢社会に対応するための意欲的な取り組みが並ぶ。その内容を紹介する(特集「地域活性化総合特区 在宅介護で全国初の総合特区」)。閉幕した通常国会で、ストーカー規制法、配偶者による暴力(DV)防止法の改正案が可決、成立した。殺人事件に発展した事案を受けて規制を強化したが、実効性を発揮するには課題も多い(「ストーカー規制を強化」)。「インタビュールーム」は、奈良県の高城亮医療政策部長。2006年に県内19医療機関で受け入れられなかった妊婦が死亡する事案が発生した同県では、救急医療体制の整備を進め、ハイリスク妊婦の県内受け入れ率は77・5%から92・4%に改善した。これまでの取り組みの成果と今後の課題をたずねた。6月前期の「社説拝見」は「出生率向上の方途を考える」と題し、出生率が過去最少になったことや、「女性手帳」の配布問題、医療事故調査制度創設などをめぐる各紙の論調を紹介する。
【7月5日号】 「水中毒・多飲症」をご存じだろうか。精神科看護や知的障害者ケアの現場以外ではほとんど知られていないが、大量の水を一気に飲むことを繰り返し、過剰な水分が体にたまり、電解質のバランスが崩れ、死に至ることもあるという。現場で深刻なこの問題について、佛教大学保健医療技術学部の吉浜文洋教授が巻頭言で述べている。特集「多様化する保育所と経営」31回目は、認可保育所の運営に市町村がどのような補助を行っているか、また病児・病後児保育にどのように取り組んでいるか、いくつかの自治体の事例を挙げて見ていく。「地域を支える」は名古屋市と岐阜市に事業所を構える株式会社ビューポイントコミュニケーションズ。発達障害などを抱える人の就労支援を行っており、利用者には自分としっかり向き合って得手不得手を理解し、相手に伝えるツールとして「自分の取扱説明書」を作ることが大事だと伝えている。iPS細胞を使った目の難病患者への臨床研究計画について、厚生労働省の審査委員会が実施を認めた。世界初の臨床研究となる見通しで、iPSによる再生医療の実現に一歩近づいた(「iPS世界初の臨床へ」)。
【7月2日号】 「直言苦言」欄では、最高裁が3月に神奈川県の臨時特例企業税に違法判決を下したことを再び取り上げた。欠損金の繰越控除によって相応の税負担をしていない企業に対し、法定外普通税を課することについて、判決は違法・無効と判断。これにより「ただでさえ国税や法定地方税が課税対象を広く押さえているため、これらとの矛盾抵触を避けて地方団体が法定外税を創設することは、一層困難になった」と嘆く。そして、地方分権で地方の課税自主権の拡充を推進しようとする場合、「国政レベルでの立法的な手当てがなければ抜本的な解決にならない」と指摘する。折からの参院選では地方分権を掲げる政党は多いが、こうした税制の根本にまで議論が及ぶかどうか。特集ページは、上場企業の今年3月期決算の総まとめ。「私の苦心」欄は、自動車税の徴収強化のため設置された奈良県の自動車税事務所の取り組みを紹介している。
【7月5日号】 連載の自治体2013年度税収見通しは高知県を掲載した。「私の苦心」欄は、宮沢賢治の生誕地である岩手県花巻市などを管轄する花巻県税センターの取り組みを紹介。滞納者を持続的に減らしていく狙いから、対象を「文書催告」から「差し押さえ拒否」まで4段階に分類し、段階に応じて組織的に対応。動産差し押さえの上、計画的納税を勧めるなどで、徴収率改善の動きが見えてきたという。
7月4日号】 「日本経済を支える『柱』にも」と題して、最近の不動産投資信託(REIT)の状況について解説した記事を載せた。同記事は「REITの値動きを示す東証REIT指数(総合指数)は、今年3月末まで急上昇が続いたが、4月から調整局面に入った。しかし、REITによる不動産運用は概ね好調が続いており、国内金融機関などを中心にREIT投資に対する需要も拡大している。安倍政権の経済政策『アベノミクス』の効果は、当初は期待先行の部分が大きかったが、最近では実物不動産に対する投資の拡大をもたらしており、REITは不動産の最大の『買い手』として、日本経済を支える役割を担いつつある。こうしたREITの最近の動向や先行きなどについて詳しく見ていきたい」としている。