早読み行政誌

健全な危機感(2013年7月29日〜8月2日号)

地方行政

【7月29日号】 「自治体職員が、防災に限らず自らの業務に関する基本的な情報を収集するためには、白書を読み込むことが欠かせません。白書では現状分析、課題の抽出、今後の方向性が分かりやすく示されていますので、国の政策の背景、根拠について理解を深められます。このような基本的文書を読まないと、業務の見直しや新たな事業構築の際に地に足の着いた議論が行えず、前例踏襲的な業務を続けるだけになりがちです」(地域防災最前線(20)「防災白書を読み解く〜耐震化の推進について」)

【8月1日号】 7月23日の閣議に報告された2013年度普通交付税大綱について特集。総額は前年度当初予算額に比べ2.2%減の16兆387億円で、不交付団体は東京都など49団体となった。給与水準の引き下げや職員数削減の実績に応じて、交付税を割り増しして算定する方式などを導入した、今回の大綱の特徴を概観する。「農政ウオッチング」は、農林水産省が女性農業者を対象に実施したアンケート調査の結果を取り上げた。中でも注目されるのは、20歳代の女性が、農業を職業に選んだ理由。農家の後継者といった家庭の事情ではなく、「農村生活、自然が好き」「植物や動物を育てることが好き」などの回答が上位に並び、農業を職業として積極的に選んでいる傾向が浮かび上がったのだ。同省は「農家のお嫁さんだけではなく、農業法人への就職が増え、女性農業者の姿が変わってきている」と分析している。

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内外教育

【7月30日号】 公益財団法人日本英語検定協会が、全国の小学校を対象とした「外国語活動及び英語活動等に関する現状調査」結果をまとめた。調査した2012年12月時点で、小学校英語は高学年で必修化されて2年目となるが、「課題はあるが、進んでいる」が増え3校に2校に、また、児童の英語力も「表現が増えた」「聞いてわかるようになってきた」など、良い方向に変化しつつあるようだ。ただ、教員の間では、専門外の授業への負担感や指導方法などについて悩みが深いままなことも判明。国は、小学校の英語教科化や開始学年の繰り上げを検討しているが、こうした現場の声が議論に反映されることが望まれる。

【8月2日号】 国立教育政策研究所が、これからの社会で必要とされる「21世紀型能力」についての報告をまとめた。それによると、21世紀型能力とは、「思考力」(論理的・批判的思考力、問題発見解決力・創造力など)を中核に据えた上で、「基礎力」(言語的・数量的・情報リテラシー)が思考力を支え、思考力の向かう先を「実践力」(自律的活動力、人間関係形成力、社会参画力・持続可能な未来への責任)がガイドする構成だという。ほぼ10年ごとに改訂されている学習指導要領の基礎資料となる報告だけに、教育関係者は必読だ。

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厚生福祉

【8月2日号】 改正精神保健福祉法が6月に成立した。「保護者制度の廃止」や「医療保護入院の見直し」が話題となったが、その他にも重要なポイントがいくつかある。佛教大学保健医療技術学部看護学科の吉浜文洋教授に、法改正の内容と課題等について解説してもらった。今後検討される具体的な医療提供体制の内容に注目する必要がありそうだ(特別寄稿「精神保健福祉法改正─精神科看護の立場から」)。サービス付き高齢者住宅が導入されて1年余。厚生労働省は、同住宅の入居者が利用した介護サービスの費用を、もともと住んでいた自治体が負担する「住所地特例」扱いとする方向で検討を始めた。当初、介護をそれほど必要としない人向けの「住宅」との想定で特例対象から外したが、実際には入居者の8割以上が要支援か要介護状態で、介護施設としての色合いが濃くなっているという(「住所地特例の適用検討」)。「インタビュールーム」は、NPO法人子育て応援隊ココネットあおもり代表理事の沼田久美氏。青森県立保健大学と連携し、親子連れで遊びに来られる交流広場を学内に開設、未就学児の親などから好評を得ている。

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税務経理

【7月30日号】 国際会計基準(IFRS)の導入について検討していた金融庁の企業会計審議会が6月、「基本的にはIFRSによる」としながらも、その一部の基準を適用除外にした新たな日本基準を策定する方針をまとめた。これについて「直言苦言」欄は、世界的にはIFRSの一部を適用除外している国はあるものの、あくまでごく一部の基準にとどまると指摘。新たな独自基準がIFRSと大きく異なる内容になった場合、「信頼を大きく損なうことになる」と懸念を示す。さらに、日本の上場企業の決算は、日本基準と米国基準、本来のIFRSの3種類が混在することになり、「会計基準すら統一できない日本の株式市場に、外国人投資家が投資をするだろうか」と警鐘を鳴らした。「私の苦心」は埼玉県の県税事務所を紹介。2011年度に納税率が全国最下位となったため、滞納整理に本腰を入れている。「県税収入未済額をそのままにしておくことは、きちんと納付をしていただいている多くの納税者の方の信頼を裏切ることになります」と決意を披露している。本号から、新たな全国特集として「2012年度税収決算見通し」の連載がスタート。初回は奈良県、鳥取県、愛媛県、新潟市を掲載した。

【8月2日号】 巻頭言では、星野泉・明大教授が戦後訪れた経済危機と対策を総括している。平成元年の消費税導入の際、先行実施された減税について「全体として高額所得者向けの要素が大きく、バブル出現の一因ともなった」と指摘する一方、安倍政権のアベノミクス政策について「(日本に)これまで以上に強い薬に耐え得る基礎体力、そして企業収益を個人の所得に変えられる仕組みが本当にあるのだろうか」と、やや悲観的に捉えているようだ。「私の苦心」は、福岡県筑後市を紹介。利用料が1件60円程度かかるコンビニ収納の導入について慎重に検討していたが、11年度から導入したところ、軽自動車税の約3割をコンビニ収納が占め、今後も高まる見通しという。好成績を背景に、「時代の流れとお客様ニーズに即したサービスを提供するのは当然のことです」と歯切れがいい。「2012年度税収決算見通し」は静岡県、愛知県、名古屋市、大阪市を掲載している。

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金融財政ビジネス

【7月29日号】 「必要性高まる構造改革」と題して、いわゆる「アベノミクス」の第3の矢である成長戦略について解説した記事を載せた。同記事は「今年に入って景気は急速に回復している。しかし、安倍政権の経済政策『アベノミクス』で打ち出された『三本の矢』の中の『第3の矢』、つまり成長戦略で掲げられている構造改革の必要性は下がるどころか、むしろ高まっていると言える。特に、労働市場の改革を通じて賃金が上がりやすい構造をつくり上げる必要がある。一方、海外に目を向けると、北東アジアにおける日本の地位の低下を示唆する材料が散見され始めている。景気回復が進む中でも、日本経済に対する『健全な危機感』を忘れてはいけない。また、参院選後の政治に構造改革を進める誘因を組み込むために、『3年の選挙空白期』もぜひ実現させたい」としている。

【8月1日号】 「労働力の量と質が将来の分かれ目?」と題して、日米の経済や社会状況を比較し、両国の将来の姿について分析した記事を掲載した。同記事は「安倍政権の経済政策『アベノミクス』により、日本経済は良い方向に進んでいるように見受けられる。ただし、これが長期間続く好景気につながったり、日本の競争力を回復させることができるかどうかについては、いまひとつ不透明と言える。日本の将来を考えるに当たって、諸々の批判はありながらも、大国というステータスを維持し続けている米国の状況は参考になるのではないか。筆者は、日米両国において就学および勤労の経験があることから、本稿では、あえて日米の経済と社会を比較し、遠い将来、例えば2050年時点の両国の競争力等について考えてみたい」としている。

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