【8月26日号】 「どの自治体も厳しい定数管理をしていますが、その上、国土強靭(きょうじん)化関係業務、老朽化したインフラの更新など、全国的に公共事業が増大しています。この中で限られた職員を奪い合っても全体最適は実現しません。重要なことは、一時的に大量に発生する復興事業に対応して、関係する自治体職員を全国的にいかに増加させるかということです。同時に、復興事業が終了した後に、職員数を適正規模に戻す仕組みがビルトインされた制度を設計することです。これは、東日本大震災対応にとどまらず、自然災害大国日本での次の災害復興をスムーズに進めるためにも必要です」(地域防災最前線_「防災白書を読み解く4〜自治体職員の長期派遣の課題と展望について」)
【8月29日号】 「自治体の財政状況が悪くなれば、今のように公営企業に補助金を注入していくこともかなわなくなる。そうなれば、公営企業自身の財務的な自立が必要となる。だからこそ、公営企業の資金調達を適正な水準に誘導することが重要になる。その一方で、さまざまなインフラの更新需要の時期が10年後、20年後には確実に訪れることになる。日本経済が急速に発展した、1950年代半ば以降に整備された社会インフラが50年、60年たち、長寿命化も限界が訪れ大規模な更新をせざるを得ない時期を迎えるからである。そのため、公営企業の資金需要が減少していくこともあまり考えられない。(中略)その意味でも、公営企業の資金調達の効率化は自治体の経営上、一層重要な課題となるはずである」(公営企業というアセットの生かし方(1)「公営企業改革の緊急性」)
【8月27日号】 高校生のうち、特に学力中間層の学習時間が大きく減少していることが中央教育審議会などで問題視されており、これを「学力不問入試の帰結だ」とみて、学習の動機付けにつながる大学入試改革を求める向きがある。その中の一案が高校在学中に複数回受けられるようにする「到達度(達成度)テスト」構想だが、果たして効果があるのかどうか。独立行政法人大学入試センターが開催したシンポジウム「入試研究から見た高大接続」で、濱中淳子同センター准教授が、生徒へのアンケートを踏まえた興味深い講演を行っている。濱中准教授の結論は、「入試改革に学習の動機付けは期待できないのではないか」というものだが、詳しくは本誌をご覧いただきたい。
【8月30日号】 全日本教職員組合(全教)などでつくる実行委員会が主催する「みんなで21世紀の未来をひらく教育のつどい─教育研究全国集会2013」が8月16日から3日間、名古屋市内の各所で開かれた。教職員の労働条件改善、原発・放射能教育など、現場の取り組みが幅広く報告されたが、中心となったテーマの一つは、やはり、いじめ・体罰の問題。パネルディスカッションでは、学識経験者が、いじめ防止対策推進法について「いじめの定義が不安定で、現場は混乱するのではないか」と予想。子どもが意見を表明する力を育んだり、風通しの良い学校づくりを進めたりといった「学校改革こそがいじめ克服の道だ」と訴えるなど、白熱した論議が続いた。
【8月27日号】 東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県沿岸部の釜石市と大槌町では、医療・介護関連機関の間で患者の情報を共有するネットワーク構築が進む。地域包括ケアのまちづくりを目指すシステムで、その重要性は震災を経てより高まっている(特集「医療ICT 情報共有し地域包括ケアのまちづくり」)。岩手、宮城、福島の被災3県では、介護ニーズに対し人手不足が深刻化。人材確保を後押しするため、厚生労働省は3県の介護施設に就職した人に「就職支援金」と住宅手当を支給する方針を固め、来年度概算要求に盛り込んだ(「介護施設就職者に支度金」)。「地域を支える」は、子ども専用の電話相談「チャイルドラインMIEネットワーク」。さまざまな悩みを抱える子どもに対し、指示・指導をするのではなく、ただ耳を傾けてありのままを受け止める活動を続けている。亀田総合病院副院長、小松秀樹氏の特別寄稿「医療格差」は、医療費の地域差指数で最高の福岡県と最低の千葉県とを比較。医療資源の乏しさが低医療費に直結しており、千葉県の医療の荒廃の実情を示しながら、医師養成など医療格差是正の取り組みには、自治体が自ら主張しなければならないと提言している。
【8月30日号】 鳥取県など10県が結成した「子育て同盟」が7月、同県米子市で知事会議(サミット)を開いた。少子化問題は国家的危機であるとの共通認識に立ち、地方が少子化対策を集中的に展開するのに必要な「少子化危機突破基金」創設などを国に求めていくことで一致した(特集「子育て支援 10県で『子育てサミット』開催」)。特集「多様化する保育所と経営」36回目は、国が定める保育単価と人件費との関係を、実際の社会福祉法人の事業活動収支計算書などを通じて点検した。保育単価に基づく運営費収入で人件費を賄うことは不可能ではないものの十分とはいえず、職員の給与水準を低く抑えたり地方自治体の支援を求めたりする必要があるようだ。「地域を支える」は、神戸市のNPO法人「ママの働き方応援隊」。赤ちゃんの持つ力に着目し、高齢者施設などに母子を派遣する「赤ちゃん先生プロジェクト」を展開。子育て中の母親の孤立感解消にも役立つユニークな取り組みで、注目される。「ワンコイン健診の現場から」は、政府の日本再興戦略の中に、ケアプロのワンコイン健診を想定した政策パッケージが盛り込まれた話。小さく始めたビジネスが大きな政策の流れに乗ることに戸惑いつつも、実際に「医療を動かす」段階に入ってきたことへの意気込みが感じられる。
【8月27日号】 「私の苦心」は愛知県豊橋市の債権管理室を紹介。税金をはじめ、水道料金などの税外債権についても適切に徴収するため、債権徴収手続きなどを定めた市債権管理条例を2011年に制定。これを受けて設置された債権管理室(総勢3人)で、支払い督促や訴えの提起、債権放棄の審査などに当たっている。「税以外の債権では滞納処分や法的措置を行ったことがなく、また、所管課によっては催告までしか行っていない債権もありました」というだけに、市の債権管理手続きが統一されたことを契機に、未済額の圧縮がはかどっているもようだ。連載中の全国特集「2012年度税収決算見通し」は、新潟県、熊本市を掲載した。
【8月30日号】 巻頭言では、三橋博巳日本不動産学会会長がマンション防災の強化に向けた「中間支援組織」の普及を訴えている。集合住宅では、大災害時の防災対策や改修・再建案の策定方法などが確立されていない場合が多い。このため居住者(管理組合)と民間(管理会社)、行政(自治体や消防・警察など)の3者の間で集合住宅ごとに「マンション生活継続計画」(MLCP)を策定するよう提唱しており、これを推進する中間支援組織として一般社団法人が今春設立された。東京都武蔵野市が地域防災計画にMLCP導入を盛り込むなど動きが出始めており、今後注目されそうだ。「私の苦心」は、世界遺産に登録された富士山の山頂から東側の一画を占める静岡県小山町の税務課を紹介。自然の美しさを「後世に末永く継承する」ためにも税収を確保しようという使命感は高く、「滞納者に対して督促等をしても何らかの申し出がないときは、納付折衝中心の事務処理は行わず、差し押さえ予告通知書を発送して、債権を中心に差し押さえを実施しています」ときっぱり。この結果、個人住民税の収納率は県内トップクラスを維持している。富士山が後押しする収税活動もあるということか。もっとも、課題は「職員のスキル」の維持。このため、ノウハウを生かした事務処理マニュアルの整備や執行停止基準の策定などの作業を始めているという。「2012年度税収決算見通し」は栃木県、三重県、滋賀県、大分県を掲載している。
【8月29日号】 「威嚇から対話路線に転換」と題して、連載記事「北朝鮮情勢を読む」の第3回を掲載した。同記事は「12年4月、正式に金正恩体制が発足した。その後の1年半足らずの間、北朝鮮は着々と軍事拡大路線を展開してきた。まず同年12月、西部の東倉里基地からの長距離弾道ミサイル発射に成功。これに対して、国連安全保障理事会が13年1月、北朝鮮に対する制裁を強化する決議を全会一致で採択する。北朝鮮が新たなミサイル発射や核実験に踏み切った時は『重大な行動』を取ると警告したにもかかわらず、2月12日には核実験を強行。06年10月、09年5月に続いて3回目の核実験だ。朝鮮中央通信は、核実験について『爆発力が大きいながらも、小型化・軽量化し、高い水準で安全で完璧に実施した』と報道した。この表現は、戦力としての核兵器であることをアピールするものだ。この時、北朝鮮は核兵器を軍事戦略の中心に据えることに自信を持ったのだろう。13年初めからは、核兵器を保有していなかった1953年に締結した朝鮮戦争の休戦協定白紙化を宣言し、中距離弾道ミサイル『ムスダン』の移動により、大都市を一瞬にして破壊できるという発言を繰り返した。しかし4月中旬、韓国政府が対話姿勢を維持すると発言すると、北朝鮮の政策に変化が起きる。5月以降は、韓国と米国への対話を呼び掛ける一方、日本からは飯島勲内閣官房参与を受け入れ、対話路線に転じたのである。ただ、核問題の解決は難しいとみられ、大きな流れは北朝鮮の核放棄ではなく、韓国の核武装となる可能性が高そうだ」としている。(了)