早読み行政誌

走りながら考える(2013年9月2日〜9月6日号)

地方行政

【9月2日号】 「災害時要援護者支援については、東日本大震災で避難が困難であったこと、避難先での生活が厳しい状況に置かれたこと、医療・保健・福祉サービスが十分ではなかったこと、などが大きな課題になりました。(中略)(厚生労働省の)報告書は、災害直後の救急救命時期からなぜ福祉関係者を派遣しなければならないのか、時系列・場所でどのような支援が必要なのか、について体系的に明らかにしています。災害福祉の現場に携わる方々には自明のことであっても、(中略)福祉関係者を含め、広く一般に災害福祉の必要性が認知されている状況ではありませんでした。それが、災害福祉制度構築の遅れ、ひいては福祉支援の遅れによる災害関連死を引き起こしてしまっていたのです」(地域防災最前線_「防災白書を読み解く5〜災害福祉広域支援ネットワークの構築に向けて1」)

【9月5日号】 「はじめて、公営企業の支払う利払い費用が異常なほど高いことに気付いてから、もう5年の月日がたつ。そのときは、あまりの金利の高さと、それを借り換えることができたとしたときの改善効果に驚いた。ただ、今から振り返ってみると、それは部分最適な議論にすぎなかったと、思い返すことになる。この問題は公営企業債の問題にとどまらず、国債の問題にまで影響を及ぼすことに気が付いたからである。同時にそれは、国と地方の在り方、きれいな言い方で言えば、地方の自立度合いを見直すことにもつながる、と後になって気付くこととなった」(公営企業というアセットの生かし方(2)「国の視点からも公営企業債改革は緊急課題」)

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内外教育

【9月3日号】 第28回時事通信社「教育奨励賞」の推薦58校の取り組みを「推薦校の実践」と題して、8月23日号から順次掲載している。今号は兵庫県立国際高等学校と山梨県南アルプス市立芦安中学校の取り組みを紹介。国際高校は「グローバル人間力の育成」を掲げ、国際教育を充実。自然環境に恵まれた芦安中学は、登山学習など自然活動に力を入れ、地域との絆を深めている。創造性あふれる各校の取り組みは、日本の学校教育の持つ底力を伝えてくれる。

【9月6日号】 「時代も変わったものだ」と思われる方も多いのではないだろうか。日教組が8月末に開いた定期大会で、従来は「支持協力政党」として運動方針に明記していた、民主党と社民党の文言を外した。岡本泰良書記長は大会の質疑で、「既存政党を丸ごと支持するのではなく、ヨーロッパ型の社民主義的なリベラルから、言い過ぎかもしれないが保守的なリベラルまで、総じて民主的でリベラルな政治勢力の結集を目指しつつ、日教組運動を理解する政党・議員と政策協議を重ね、支援協力関係を構築するということだ」と説明した。大会の模様を詳報した。

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厚生福祉

【9月3日号】 巻頭言は浜田きよ子・高齢生活研究所所長の「移乗介助」。ベッドから車いすなどへの移乗の介助は介護する人にとって負担が大きいが、「移乗ボード」という板を使うことでスムーズにできる。こうした福祉用具は意外と知られておらず、高齢社会になくてはならない、暮らしを支える道具である福祉用具を上手に使うよう勧めている。特集「地域活性化総合特区 医療の地域格差解消を目指す」は、県内の医療格差を是正するための香川県の取り組みを紹介する。同県は離島を多く抱え、人口減少と高齢化の問題も深刻だ。特区の指定を受け、遠隔医療やへき地薬局開設などを進める一方で、救急車による転院搬送など規制緩和を求めても実現できていない事業もある。県は粘り強く交渉していくという。8月前期の「社説拝見」は、社会保障制度改革国民会議の報告書、最低賃金の引き上げ、美白化粧品被害などをめぐる各紙の論調を紹介した。

【9月6日号】 特集「多様化する保育所と経営」37回目は、「地方自治体の『官民格差』への取り組み」。これまで、公立と私立の認可保育所の給与水準の差異などを取り上げてきたが、その「官民格差」を是正するための各自治体の取り組みについて、具体例を挙げて見ていく。「進言」では、兵庫県病院局病院事業管理者の西村隆一郎氏が、「地域枠」の若手医師をどう育てるかについて提言。単に医師不足を補填(ほてん)するための地方派遣では医師は根付かず、情報通信技術を活用し、専門医資格取得も視野に医師のキャリアアップを支援する必要があるとしている。「地域を支える」は長野県の児童自立支援施設「波田学院」。学校や家庭に適応できない子どもたちが、豊かな自然の中で集団生活をしながら、教育を受けるとともに社会で自立できる力を付けるための施設だ。地域住民との交流プログラムなどもボランティアらに支えられて順調に進んでいるが、職員の体制的に、入所を希望する子を全て受け入れられないのが課題だという。

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税務経理

【9月3日号】 「私の苦心」は石川県金沢県税事務所を紹介。同事務所は法人二税、軽油引取税などについて全件分の課税業務を担当しており、調停額で県全体の73%を処理する税務の柱。しかし個人県民税の滞納が増加傾向にあるため、昨年度から市町村と連携した地方税滞納整理機構を立ち上げた。そして「税の公平を守る」を錦の御旗に滞納整理に全力を挙げたところ、全引受税額の約3分の1を徴収することができたという。今年度は県内の他地域でも機構立ち上げを急いでおり、成果が期待される。連載中の全国特集「2012年度税収決算見通し」は、東京都、大阪府、和歌山県、さいたま市を掲載した。

【9月6日号】 「私の苦心」欄では、北九州市の税理士が「経営革新等支援機関」の活動を紹介している。同機関は、2013年3月で中小企業金融円滑化法が期限切れとなったのを受けて、中小企業の複雑な経営問題を解決するため各地で設立が進められている組織で、財務審査への対応や経営改善計画作成などについて専門的な支援やアドバイスを行う。企業経営や財務・税務に一定レベル以上の技術を持つ個人や法人を国が認定していて、今年6月時点で約1万1000人が認定され、その約7割が税理士という。筆者は同機関の研修活動に講師として参加しているが、特に強調しているのは「経営理念は全ての基盤であり、多くの成功事例は例外なく理念の浸透度が高い」ということだ。少子高齢化の進行で「売り手市場であった過去延長の経営計画は通用しなくなって」いる中で、中小企業も確固たる経営理念を持つことが成功のかぎと主張している。「2012年度税収決算見通し」は神奈川県、広島県、堺市、福岡市を掲載している。

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金融財政ビジネス

【9月2日号】 「現在は景気回復局面」と題して、身近な社会現象から景気動向を分析する記事を載せた。同記事は「景気は2012年11月ごろを『谷』として、現在は戦後第16循環の景気拡大期にある可能性が大きいと、筆者は考える。日経平均株価は5月をピークに直近で下落し、調整局面にあるが、急上昇した反動という一時的な面が大きいと考えられる。消費増税の行方や米国の量的緩和第3弾(QE3)の縮小、新興国への資金の流れをめぐる思惑などの不透明な材料も株価の足を引っ張っているようだ。また、リーマン・ショック後、夏は毎年、経済指標の季節調整値が予想より下振れしやすい時期となっていることも影響していよう。現在売り建てになっている、景気ウオッチャー調査による株式の模擬売買で、現状判断指数(DI)が前月比1ポイント以上改善するという買いシグナルが点灯すれば、日経平均も上昇に転じるなど、緩やかな景気拡大局面は継続するだろう」としている。

【9月5日号】 「長期金利への対応が大きな鍵」と題して、連載記事「日本再生への道」の第5回を掲載した。同記事は「安倍政権の経済政策『アベノミクス』は大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略という『三本の矢』で構成されている。それぞれの具体的な政策対応は、国内外で多くの論評を巻き起こしているが、これまでのところ、市場では一定の効果を発揮した。アベノミクスは今後の日本経済に少なからぬ影響を与える可能性が高い上、何よりも既に走りだしているだけに、今は単なる批判ではなく、失敗に終わらせない提言が必要だ。そのためには、走りながら考えなければならないことも多いが、あらかじめ想定される問題点を把握しておくことが不可欠だろう。本稿では、金融政策を中心としてアベノミクスに内在する基本的な問題点を指摘した上で、アベノミクスを成功させるための条件を検討してみたい」としている。

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