【11月11日号】 「一般に災害時要援護者ほど、災害時への備えが必要ですが、自治体から提供される情報が一般市民向けにとどまり、要援護者にとってはアクセスしにくいものになりがちです。防災情報の提供に当たっては、新たなメディアを活用するとともに、少数者への配慮を忘れずに取り組みたいものです。(中略)災害時は情報の重要性が高まると同時に、情報への欠乏感も非常に高まります。特に災害時要援護者は、一般に情報へのアクセスが弱いため、情報提供者側からの情報保障への努力が求められます。防災ラジオは、日常使っているものが災害時にも活用できるため、有効性が高いといえます」(地域防災最前線_「防災白書を読み解く11=避難経路等のバリアフリー化と情報提供のあり方に関する調査研究1」)
【11月14日号】 「NPM(新公共経営)が当初期待していた効果を必ずしももたらさず、行政に対する評価が厳しい状態が続いているのは何故なのか。民間企業の目的は、利益の最大化である。よって、その経営手法はその目的の実現に最適な手段に他ならない。しかし、公務の目的は極めて政治的な判断によって決められ、一様ではない。利益を上げるといった目的を遂行するには、『選択と集中』といった言葉が象徴するように一部の顧客に特化し、経営資源を特定の分野に集中させること、利益性が低くなった分野からの撤退などが議論なく正しいとされる。しかし、公務では国民、住民間の公平性、警察、防衛が代表するような撤退が許されない業務が存在する。このような基本的な差異を踏まえれば、公務は民間では当たり前すぎて議論されない『目的』について、民主的な手続きを経て毎回しっかりと設定される必要があり、その設定された目的に合わせて広範囲な手段の中から最適な手段が選択されなければならない」(公務員講座(1)「手段を目的にしてはならない」)
【11月12日号】 大学レベルの授業を無償で提供する大規模公開オンライン教育「MOOC」(Massive Open Online Courses=ムーク)推進を目指して、大学や企業でつくる一般社団法人「日本オープンオンライン教育推進協議会」(JMOOC)が発足した。MOOCは、講義の無償配信に加え、課題を提出した者には修了証を発行。大学が優秀な学生を集めたり、企業が有能な人材を採用したりする手段にもなっている。しかし、世界の有力実施団体の講義は英語で行われるため、多くの日本の大学にとっては参加が厳しいのが実情。そこで独自の団体をつくり、国内での普及とともにアジアや世界へ日本語による発信を目指すことにした。これまでの大学の在り方を変える可能性を秘めるともいわれるMOOCだけに、大学関係者以外も要注目だ。
【11月15日号】 全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の学校別平均点を公開せよという一部の首長らの主張が波紋を広げている。学校ごとの成績を公開して、それぞれが切磋琢磨(せっさたくま)して学力向上に励めばいいという考え方のようだ。巻末の匿名コラム「ラウンジ」は、この問題を取り上げ、「社会や地域、そこに住む人々が全て均一ならば、それは成り立つだろう。ところが、地域や住民は極めて多様であり、同一条件のところなどない。そんな公立小中学校に順位を競わせて、何が得られるのだろうか。『地域の事情』という言葉をぐっとのみ込んで、日々苦闘を続ける教職員たちの思いを、『民意の代表者』を名乗る政治家に踏み散らかしてほしくない」とつづる。教育関係者の多くは、「わが意を得たり」と思うのではないだろうか。
【11月12日号】 シリーズ「医療・介護業が知っておきたい最新トラブル情報」3回目は、サービス残業の問題を取り上げる。サービス残業をめぐるトラブルは数年前から急激に増加しており、医療・介護施設でも同様の傾向にあるという。どのようなトラブルがあるのか、具体例を交えつつ解説する。厚生労働省が、社会福祉法人の改革議論に着手した。社会福祉法人の在り方をめぐっては、2006年にも有識者会議で検討したものの、その後もほとんど実態は変わっていないとの指摘がある。こうした経緯と併せ、先月開催された有識者検討会での議論などを伝える(「社福法人改革の議論に着手」)。「地域を支える」は、鹿児島市の一般社団法人「みつばちビレッジ」を紹介。発達障害のある未就学児の支援事業と、特別支援学校に通う子どもの放課後等デイサービス事業を行う「みつばちキッズ」、デイサービスと就労支援を兼ねた「みつばちハウス」を展開、障害のある子どもを安心して預けられる場所、みんなが笑って過ごせる場所づくりを目指している。「ワンコイン健診の現場から」は、タイトルそのままに現場で働くスタッフの声がテーマ。日々上がってくる日報の内容は、業務展開への示唆に富むと同時に、組織のモチベーションアップにも活用できるという。「現場の声」が大事なのは、いずこも同じようだ。
【11月15日号】 20数年前、「認知症」と名前が変わる前の「痴呆」は「予防できるわけがない」「良くなるわけがない」と言われていた。その当時から予防に取り組んできた増田未知子氏が、認知症予防学会で受賞した喜びを巻頭言でつづっている。いまや予防の重要性は広く認識されるところであり、長年の取り組み持続に敬意を表したい。特集「多様化する保育所と経営」45回目は、保育事業を営む上場企業2社の土地と建物、さらに自治体からの補助金の会計処理に焦点を当てる。厚生労働省は、借地での保育所施設整備は安定的な運営に懸念があるとして慎重な姿勢だったが、主に大都市圏での用地難などを背景に、要件を緩和。2社のうちサクセスホールディングスは「保有する土地がゼロ」で、全て借地で保育所を運営しているという。市販薬のインターネット販売について、政府は一部を規制すると発表した。安倍晋三首相が「ルールの下で全て解禁」を明言、成長戦略にも「原則全面解禁」が盛り込まれていたが、安全性を優先した形で決着した(「薬ネット販売、一部規制」)。「インタビュールーム」は、山口県の渡辺修二健康福祉部長に、中山間地域や離島が多い同県での救急医療体制整備の状況について尋ねた。
【11月12日号】 「ふるさと納税」は出身地や応援したい自治体に2000円を超える寄付をすると、居住地に納める住民税や所得税が一部控除される制度だが、自治体が寄付集めを狙って返礼を出す例が目立つ。そこで総務省が今年初めて実施した実態調査の結果を「解説」欄で紹介した。都道府県のうち23団体、市町村の52%が特産品などの返礼を贈呈しており、中には5万円以上相当のリゾート施設利用券を贈る自治体もあるという。東日本大震災をきっかけに利用が急増し、2011年度の寄付総額は約649億円に達したとされたが、今回、企業の送金を除いて集計した結果、11年度は約137億円、12年度は約96億円。古里への寄付をブームではなく定着させるためには、使い勝手を良くする工夫も必要のようだ。「私の苦心」は札幌市の北部市税事務所を紹介。固定資産税の算定を効率よく行うため、航空写真を利用した評価方法や木造家屋の評価計算ソフト「ハイハウス」などを導入しているというが、「OAシステムに頼りすぎることなく、最終的には『人による現地調査』が最も大切」と自戒しているところに好感が持てる。連載中の全国特集「2012年度税収決算見通し」は、岩手県、千葉県、島根県、横浜市を掲載している。
【11月15日号】 巻頭言「フォーラム」欄で、元政府税制調査会長の石弘光一橋大名誉教授が法人税減税について論じている。安倍首相は復興特別法人税の前倒し終了を決めた上に、もう一段の法人税基本税率引き下げに意欲を燃やしている。石氏は、アジア諸国の法人税実効税率が25%程度であることから、38%を超える日本は「確かに高水準であり、いずれは引き下げる必要があろう」としながらも、「それが2015年度からとなると、問題はそう簡単ではない」とけん制。法人税率1%引き下げには財源4000億円が必要であり、「消費税の増収分を法人税減税に充当すると批判されないためにも、しかるべき財源を用意するべきである」と、くぎを刺した。「私の苦心」は、東京都の軽油引取税担当課を紹介。灯油などを混入させる不正軽油による軽油引取税の脱税を防止するため、都は2000年から不正軽油撲滅作戦に取り組んでおり、今では1道19県との連携体制ができあがった。最近は落ち着いているものの、中東情勢などに異変があれば軽油価格の上昇や不正の横行が再燃する恐れは消えない。自治体ネットワークによる監視を緩めない方針を示している。
【11月11日号】 「『非伝統的な金融政策』の波及経路」と題して、日銀による「異次元緩和」についての解説記事を載せた。同記事は「先進国はリーマン・ショック後、おしなべて積極的な金融・財政政策を打ち出した。特徴的なのは、そうしたマクロ政策を受けて拡大した財政赤字が改めて問題視されたため、さらに踏み込んだ積極的な金融緩和策がとられた点だ。いわゆる『非伝統的な金融政策』である。特に日本では、財政赤字がもともと巨額であったことから、かつてない大きな負荷が金融政策にかかる状況になっている。この非伝統的な金融政策は、政策金利がほぼ0%という制約を背景に生まれたものだ。政策金利の下げ余地が実質的にない以上、成果を出すことはもともとかなり難しい。そうした認識を前提にしたうえで、貨幣数量説による説明の問題点などを含め、本稿では非伝統的な金融政策の波及経路と期待される効果の大きさを考える」と述べている。
【11月14日号】 「限界を打ち破るイノベーションを」と題して、日本の足元での景気回復傾向を定着させるために何が必要かという記事を載せた。同記事は「最近のわが国経済には、少しずつ変化が出始めている。景気の流れで見ると、わが国経済は2012年11月に底を打って以降、緩やかに上昇傾向を歩んでいる。その間、安倍晋三首相が打ち出した『アベノミクス』の後押しによる株価上昇もあり、国民の景気に対する悲観的な感覚も徐々に氷解している。今回の景気回復の重要なエンジン役を果たしているのが、底堅い展開を示している個人消費であることも、従来の景気回復のプロセスとは事情が異なっている。従来、わが国の景気回復をけん引したのは輸出であることが多く、海外経済に支えられ輸出が伸び、それによって少しずつ個人消費などの内需が回復するケースが多かった。今回の景気回復も、円安傾向による自動車など主力輸出企業の業況回復が大きな要素にはなっているものの、それにも増してわが国の景気をサポートしているのが個人消費であるのは心強い。ただ、足元の景気回復を一段としっかりさせ、さらにわが国経済を活性化するために最も求められるファクターはイノベーション=改革だろう。わが国は既に人口減少・少子高齢化の加速局面に入っており、従来の手法で経済活動を続けていっても限界に行き着くことは目に見えている。その限界を打ち破り、今までとは違ったわが国経済をつくるためには、バブル崩壊後の“縮み志向”から脱却して、新しい手法をつくり上げるイノベーションが必要と考える」と述べている。