【12月2日号】 「注目すべきは、情報伝達手段として公式フェイスブックページを使っていることです。フェイスブックは写真のアップやコメントがしやすいなどコミュニケーション機能が優れていて、多くの人が使っています。スタッフの更新のしやすさや、読み手にとっての見やすさ、反応のしやすさなどで、ボランティア活動の広がりにつながっていると思います」。月曜連載「地域防災最前線_」は、10月16日の台風26号で大きな被害を受けた伊豆大島のボランティア活動を取り上げている。大島社会福祉協議会は、被災から2日後に災害ボランティアセンターを設置。島外からボランティアを受け入れられる状況かどうか、フェイスブックを使って逐次、情報発信し続けた。こうした取り組みが、地元のニーズに見合ったボランティアの受け入れにつながったとみられる。最近、ボランティアや企業、自治体など外からの支援を生かす力を意味する「受援力」という言葉が盛んに使われるようになった。筆者の言葉を借りれば、伊豆大島での今回の取り組みは「見事な受援力」を示した好事例といえそうだ。
【12月5日号】 「背景にあるのは、資材価格の高騰や、建設技能労働者といわれる職人の不足だ。東日本大震災の復興事業の拡大や、来春の消費増税前の駆け込み需要などを受けた民間投資の増加が、建設業者が集まりにくい状況に拍車を掛けているようだ」。特集記事「公共工事、相次ぐ入札不調」は、公共工事の入札で落札者が決まらない入札不調が全国的に相次いでいる現状について、内政部記者がリポート。例えば秋田市は、予定する市庁舎建設工事の入札が2度の不調に追い込まれた。3度目の入札で、ようやく落札者が決まったものの、契約の遅れにより、適用される消費税率が4月以降の8%になるといった影響が出ることになった。安倍政権下で公共工事の発注量は増えているが、職人の人手不足など短期間では解決できない問題もあり、地域によっては、事業を消化しきれないところもあるようだ。2020年夏の東京五輪・パラリンピック開催を控える中、問題は今後いっそう深刻化する恐れもあるという。
【12月3日号】 今号から「特集・小学校英語を考える─東アジアの試みから見えてくるもの─」が、5回連載でスタートした。文部科学省は、小学校の英語教育の開始時期を現行の5年生から3年生に引き下げ、5、6年生に関しては、正式な教科とする方向で検討を進めている。特集では、一足先に教科として英語を小学校に導入している中国、韓国、台湾の現状と課題を詳しく紹介しており、今後の英語教育の在り方を考える上で、さまざまな示唆が得られるはずだ。筆者は、教育心理学、応用言語学、教育言語学が専門で、東アジア諸国の英語教育についても、精力的に研究を行っている米ペンシルベニア大学教育学大学院准教授のバトラー後藤裕子氏。初回の「小学校英語の目的とカリキュラム」では、国家戦略として英語力強化に取り組む中国、韓国などの様子を生き生きと描いている。
【12月6日号】 大学入試改革をめぐる教育再生実行会議の「第4次提言」をめぐっては、各方面からさまざまな声が上がり、まさに「百家争鳴」の感がある。今号の巻頭コラム「ひとこと」では、広田照幸日本大学教授が、「知識偏重の一点刻みの選抜」からの脱却については、「歓迎する」としながらも、「代わりに示された、『各大学で丁寧な選抜を』という方向はいただけない」と異を唱える。大学入試にかける多大なエネルギーを、大学も高校も「育成」に振り向けるべきだというのがその趣旨で、むしろ「簡素な選抜」にすべきだと言うのだ。なるほど、一理ある。いずれにせよ、制度設計を担当する中央教育審議会が「丁寧な」審議を求められるのは、言うまでもない。
【12月3日号】 郊外の大規模施設から町中の小規模施設へ─。新潟県長岡市で、特別養護老人ホームを解体し、入居者を5カ所に移転させる取り組みが進められており、間もなく終わりを迎える。相部屋の場合が多くプライバシーもないに等しい郊外の大規模特養は、いわば災害時の「避難所」。高齢者が住み慣れた地域の中で普通に暮らせるようにと、国の構造改革特区制度を利用し、8年がかりで進めてきた。その内容を紹介する(特集「特養解体、小規模施設に分散」)。エイズウイルス(HIV)に感染した献血者の血液が、日本赤十字社の検査を擦り抜けて2人の患者に投与され、うち1人がHIVに感染していたことが分かった。擦り抜けは10年ぶり。感染初期は血中のウイルス量が少なく検出できない「ウインドーピリオド」があり、感染の可能性がある人からの献血を避けるには、問診と自己申告に頼るしかないという難しさがある(「HIV血液、2人に輸血」)。「地域を支える」は、京都府綾部市にある情緒障害児の短期治療施設「るんびに学園」を紹介。虐待や育児放棄により問題行動を繰り返す子どもたちだが、「いい環境をつくってやれば子どもはおのずと育つ」をモットーに、学びや育ちを支援。徐々に地域とのつながりも深めている。
【12月6日号】 「挨拶」の2文字はともに手偏である。NPO子ども相談センター診察医の竹下研三氏は、児童相談所に保護されている子どもと面談するとき「こんにちは」と挨拶から始める。発達障害で挨拶ができない子にも、しつこく挨拶を繰り返すと、やがてそれらしいしぐさで応えてくれるようになる。どうしても反応できない難病の子には、手や指を絡めることで心に触れようとする。「握手」も手偏だ。手は人と人の心をつなぐものなのかもしれない(巻頭言「あいさつ」)。特集「多様化する保育所と経営」47回目は、保育事業を手掛ける上場企業2社の経営状況をひも解く最終回として、有価証券報告書の負債、資本、コーポレートガバナンス(企業統治)を取り上げた。コーポレートガバナンスに関連して、社会福祉法人に対する監査制度についても説明する。「インタビュールーム」は、うつ病経験者のサポート活動を行っているNPO法人ここらいふ代表、松本純子さん。自分の店を開放して悩みなどを語り合うサロンを開催、自らのうつ病体験をもとに、自分が欲しかった場を提供している。「ワンコイン健診の現場から」は高級品を扱うデパートでのワンコイン健診という、一見ミスマッチな企画の話。ニーズも発展性も十分にあり、デパートの「モノ」売りから「コト」売りへという変化を感じさせる。
【12月3日号】 今回の「私の苦心」に、愛知県警の放置駐車対策センター長が登場している。「“警察が滞納処分?”と不思議に思われることでしょう」と丁重に語るセンター長は、2006年の改正道路交通法施行で、放置駐車をした運転者が警察に出頭しない場合などに、車検証上の使用者に対して反則金と同等額の法規違反金の納付命令を科す仕組みが導入されたことを指摘。反則金は国庫に入るが、放置違反金は都道府県の歳入となるため、県警が徴収事務に当たっていることを紹介している。県警ならさぞやこわもての取り立てを想像するところだが、徴収ノウハウは県税などと変わらない。放置違反金の納付命令や督促、滞納処分などの事務を一元管理し、国税OBらの指導も仰いで徴収員を育成しており、滞納者に対しては預金やクレジット債権、車両等を差し押さえて公売にかけるのも同じ。むしろ、「課税関係資料がありませんので、滞納者の財産調査はゼロからの出発となり、金融機関等への調査展開には時間と労力を要し、財産を突き止めるのに苦心しています」とぼやく。滞納者から「バカヤロー」などと怒鳴られる職員のメンタルヘルスにも目配りしながら、「“逃げ得”は絶対に許さない」と決意を述べる姿勢に、共感する地方公務員は少なくないはずだ。
【12月6日号】 「私の苦心」は、宮城県の東部県税事務所を紹介。石巻市など牡鹿半島一帯を所管しているが、東日本大震災では同県内の人的被害の半数を超える約6000人の死者・行方不明者と、約4万7000棟の全半壊住家という大変な被害を受けた。復興計画上で「復旧期」から「再生期」に向かう今年度だが、職員不足の一方で、代替家屋の取得件数の増加に伴って家屋評価事務が例年の3倍に急増し、パンク状態。家屋評価が間に合わず、一部で賦課期日を延期している一方、復興を優先するため滞納整理を進められずにいる市町もあると明かす。震災後2年半たつものの、被災地の県税事務所として「いかに早く通常の業務体系を取り戻すか」という課題に取り組む苦悩と、そこまでの道のりを改めて考えさせられる。
【12月2日号】 「アジアのバブルは崩壊するのか?」と題して、アジア地域の現状と展望に関する解説記事を載せた。同記事は「スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、2014年のアジア諸国の実質GDP(国内総生産)成長率を前年比5・6%と、13年の5・3%(推計)をやや上回るとみている。米国経済の回復に支えられると予測するからだ。もっとも06〜10年の平均成長率6・4%に比べると低く、また欧州や中国の予想以上の低迷などで下振れする可能性もある。他の地域に比べて高い成長率を維持してきたアジア諸国であるが、民間部門の負債の増加や不動産価格の上昇など経済の不均衡が多くの国でみられ、銀行にとっての信用リスクが上昇している。今後、経済環境が悪化した場合、こうした構造的問題が足かせとなり、景気の下方サイクルが増幅される可能性もある」と述べている。
【12月5日号】 「問われるオバマ大統領のマネジメント力」と題して、米医療保険改革法についての解説記事を載せた。同記事は「米国では、医療保険改革法(オバマケア)に関するトラブルによって、政府をマネジメントするオバマ大統領の力量が問われている。オバマ大統領の支持率は就任以来の最低水準に落ち込み、不人気に沈んだブッシュ前政権の2期目との類似性が指摘され始めている。そもそも21世紀に入ってからの米国では、政府の役割の『量的な拡大』と技術革新の進展に伴う行政の『質的な高度化』が同時進行しており、政府のマネジメントに関する難易度が格段に高まっている。オバマケアのトラブルはいずれ終息すると見込まれるが、政府の積極的な役割を重視するオバマ政権としては、今回のトラブルで浮き彫りになった『大きくなった政府』のマネジメントは、決して軽視できない課題である」と述べている。