【12月9日号】 「そのころの熱気と比べて、今は足りない。リーマン・ショック以降はさまざまなことがあり、財政的な厳しさもあると思うが、何か陳情、中央依存という雰囲気が出てきているような気がしてならない」。冒頭の特集では、指定都市・中核・特例3市長会が11月に開いた都市間の連携を考えるシンポジウムをリポートする。引用したのは、シンポジウムで基調講演に立った北川正恭早稲田大大学院教授(元三重県知事)の発言。北川教授は、政治改革が盛んに議論されていた1990年代に比べ、地方分権への熱意が政府も自治体も薄れてきていると指摘し、「補助金頼みの地方自治体では国の追認団体にならざるを得ないし、財源確保の知恵がなくては永遠に国に勝てない。歳出の自治が進み始めた今こそ、歳入の自治を本気で考える時だ」と、地方の自主的な取り組みの必要性を訴えた。記事では、現行の都市制度の問題点や権限移譲の在り方、3市長会の連携のあるべき姿などをめぐって議論が交わされた、篠田昭新潟市長、仲川元庸奈良市長、服部信明神奈川県茅ケ崎市長によるパネルディスカッションの模様も紹介している。
【12月12日号】 「官民協働の中で公務員の果たすべき役割とは何か。それは、ファシリテーター(調整役、促進者)としての役割を果たすことである。自分は主役ではなく、住民を主役と位置付け、住民と住民を結び付けるための触媒となるのである」。木曜隔週連載「公務員講座」の第3回は「官民協働と公務員の役割」について考える。あらゆる地域でさまざまな形でのコミュニティー喪失が指摘され、今やコミュニティーの再生は、地域、世代を問わず大きな課題となっている。筆者は、コミュニティー再生へのプロセスについて、官が直接独占的に行うのではなく、「民」が主体的に関わる官民協働が重要だと主張する。公務員に対して筆者が提言するのは、官民協働の入り口、つまり、住民同士がつながるきっかけづくりのところで、中立的な立場である利点を生かし、縁の下の力持ちとしての役割を継続して担うということだ。公務員が私的な立場で地域コミュニティーに関わる経験を持つと、当事者の立場で行政に望むことが分かり、仕事にも生きると筆者は期待を寄せている。
【12月10日号】 政府の教育再生実行会議が1点刻みを改めた「達成度テスト(発展レベル)」(仮称)の導入を提言するなど大学入試が大きな転換を迫られている中、大学入試センターが、東京都目黒区内で「2013大学入試サミット─21世紀の大学入試と教育再生の展望」を開催した。まさに「旬」のテーマを扱ったシンポジウムを今号から2回にわたって紹介する。初回は、銭谷眞美東京国立博物館長(元文部科学事務次官)の基調講演を中心に取り上げた。
【12月13日号】 経済協力開発機構(OECD)が実施した2012年の「生徒の学習到達度調査」(PISA2012)の結果概要を紹介する連載の後半は、調査に参加した生徒や学校に対する質問紙調査の結果を中心に取り上げた。日本ではOECD平均に比べて数学に対して不安を感じている生徒の割合が高く、自信を持っている割合は低かった。また、数学に対する興味・関心や、数学を学ぶ意義を感じている生徒の割合も、OECD平均を下回った。成績自体は各国の中でもトップクラスにもかかわらず、この自信、意欲の無さはなぜか。文部科学省の担当者は「国柄もあるのかもしれない」と話しているが…。
【12月10日号】 認知症の男性が線路に立ち入り電車と接触して死亡した事故で、名古屋地裁が男性の家族に対し、鉄道会社への損害賠償を命じる判決を出した。認知症高齢者の介護問題は深刻だ。安易に監督義務者の責任を認めるのであれば、介護の引き受け手がますますいなくなるばかりか、認知症高齢者を室内に監禁するなど虐待にもつながると、弁護士の石黒清子氏が巻頭言で危惧している。シリーズ「医療・介護業が知っておきたい最新トラブル情報」6回目は、「宿直や仮眠と労働時間について」がテーマ。県立病院の産科医が、宿直が実際には時間外労働であるとして割増賃金支払いを求め、最高裁がこれを認めた裁判は記憶に新しい。違法状態が常態化してきた医療現場の問題にも触れつつ、宿直や仮眠に関する注意点、労働時間との関係を解説する。新連載「私たちの工夫」が今号からスタートした。全国の年金事務所長らに、日頃の業務の中で工夫していることや苦労話などをつづってもらうもので、地味で注目されることは少ないものの重要な年金事務の現場をお伝えする。
【12月13日号】 特集「東京財団連続フォーラム」3回目は、日本とオランダの介護政策がテーマ。両国は、高齢化の進展や寿命の延伸、公的介護保険制度といった共通項を持つ。高齢化に伴う介護費用の増大に、オランダがどのように対処しようとしており、どのような課題があるのか。かぎを握るのは在宅ケアで、日本にとっても非常に参考になる内容だ。「地域を支える」は、那覇市の真地団地自治会が毎週金曜の昼に開催している「百金食堂」を紹介する。1食100円で、高齢者が歓談しながら食事を楽しめるよう、ボランティアや食品業者らも協力。地域ぐるみで交流の場を提供し、高齢者を支える取り組みで、興味深い。課題は運営費だという。
【12月10日号】 巻頭言で、阿部泰隆神戸大名誉教授が不動産の流通を促進する税制改正を提言した。愛妻に居住用財産を生前贈与できるような不動産取得税などの減免措置、消費税を転嫁しやすい中古住宅取引の在り方などを挙げているが、注目したいのは不動産仲介料の扱い。不動産売買の斡旋(あっせん)料は両当事者から合わせて「6%+12万円」が相場で、5000万円の土地なら312万円にもなることが取引活性化の妨げとなっているという。しかも、「建前では上限となっているが、実際上は公定価格と思わせているので値引き交渉も容易ではない」と指摘。「斡旋料の割合は上限であることを政府がきちんと業者を指導して明示させる」という対策は、すぐ実施すべきだと感じる。「私の苦心」は静岡県吉田町の税務課を紹介。大井川の西岸に位置する人口3万人の小自治体で、かつては固定資産税の算定を「その他の土地評価法」(標準値比準方式)で行っていたが、土地の評価資料が乏しく、職員も問い合わせへの説明に苦慮していた。そこで数年がかりで計画的な現地調査や研修会参加など準備を重ね、2006年に町全域の路線価図の公開にこぎ着けた。また、日曜開庁に合わせて納税相談や税金の納付ができる体制づくりなどに取り組んだ結果、12年度の収納率はかなり改善されたという。周到な準備によって着実に成果を出しているところは評価できよう。
【12月13日号】 「私の苦心」は、福島県白河市の税理士、佐藤雄一郎氏が「アベノミクス」を批判している。「今わが国の労働者の3人に1人は非正規雇用で身分が定まらない。大学卒の若者でも不安定な就職を余儀なくされ、経済界としてもお金を使ってもらいたい年齢のときに使うお金はなく、人生の大切な結婚すらもままならない。こういう階層にも消費税は容赦なく負担を強要するのだ」と切り込み、さらに「福島県の原発事故被害は深刻で避難者数万人は帰郷もままならぬのに、復興税はもうやめましょうと言う」と指摘、「安倍内閣は何も分かっていない」と怒りを爆発させる。景気回復と浮かれる間に、こうした声にも目を配る必要があるということを感じさせる。
【12月9日号】 「農業を成長産業に変えられるか」と題して、アベノミクスと農業に関する解説記事を載せた。同記事は「現在の安倍政権は、世界的に弱いとされてきた日本の農業を成長産業にすべく、農業の競争力強化に取り組もうとしている。しかしながら、日本の農業がこれほどまでに衰退した理由は、農業ではなく農家、特に農家の大多数を占める零細兼業農家を過保護なまでに保護してきた農業政策にあると考えられる。従って、農業の競争力強化には、“岩盤規制”などと呼ばれている従来の農業政策を大きく変えていく必要がある。そこで本稿では、安倍政権が掲げる新たな農業政策を検証し、その実現性と課題について考える」と述べている。
【12月12日号】 「デフレリスクへの対処迫られるECB」と題して、欧州中央銀行(ECB)の金融政策についての解説記事を載せた。同記事は「ユーロ圏は2013年にソブリン危機と景気後退から脱却した。しかし、欧州中央銀行(ECB)は低インフレを警戒し、11月に主要政策金利を0・25%へ引き下げた。ユーロ圏経済が抱えるダウンサイドリスクはなお大きく、ECBが追加措置を迫られる可能性を排除することはできない。他の中央銀行と同様に量的緩和(QE)が検討されることも考えられる」と述べている。