【12月16日号】 「これまでお土産として捉えられていたが、世界中のワインを知っている第三者の方々に評価してもらったのは大きい」。地域発の特色ある動きとして、出品した赤ワインが2013年8月の国産ワインコンクールで金賞を受賞した、新潟県胎内市の直営ワイナリーを取り上げている。ワイン造りは、合併前の旧黒川村がリゾート開発の一環として着手し、現胎内市に引き継がれた。自治体直営のワイナリーは、全国的にも珍しい。コンクールに出品したのは、第三者による評価を得て認知度を高めるためで、今回、3度目の出品、創業からわずか6年での快挙となった。記事からは、これまで「土産品」にとどまっていたワインからの脱却を目指し、よりブランド力のある産品に育てようと懸命に取り組む、ワイナリー関係者の熱い思いが伝わってくる。
【12月19日号】 全国の公立美術館や図書館、自治体、NPO法人などで、過去の映像・写真を収集、保存、復元、上映・公開する「フィルム・アーカイブ」の動きが広まりつつある。「特集・フィルム・アーカイブと地域活性化」では、神奈川県小田原市のNPO法人おだわらシネマトピアの取り組みを紹介する。シネマトピアは、小田原の古い街並みや市民生活を記録した映像・写真を集めて映画化し、市民らに上映。地域の映像文化の振興や活性化に役立てることを目指している。一方、行政側も、郷土愛を育み、地域の絆づくりにつながるとみて、古い映像や写真の活用に着目。小田原市は2010年12月から、地元の街並みや文化、市民の生活の様子などを記録した映像、写真、歴史資料などを集め、デジタル化して保存する事業を始めた。関係者は「市との連携、情報共有の体制は十分とはいえない。それを築いていくのが今後の課題」と指摘し、フィルム・アーカイブのさらなる展開に向け、行政と民間の活動の連携を密にする必要性を訴える。
【12月17日号】 短期集中連載「特集・小学校英語を考える」も今回で最終回。英語教育で先行する東アジア諸国の実践例を基に、筆者のバトラー後藤裕子ペンシルベニア大学教育大学院准教授が、日本の小学校英語政策を考えていく上で(1)長期的視点に立った目標設置(2)十分な投資に基づく教員の養成(3)中学校と連携した導入─が、特に重要と指摘している。ちょうど文部科学省が、小学校での英語教科化の方針を打ち出した時期だけに、タイムリーな論考となっている。ぜひご一読を。
【12月20日号】 2012年の経済協力開発機構(OECD)の「生徒の学習到達度調査(PISA)」で、前回(09年)に続いて参加各国・地域の中でトップとなったのが、中国・上海。成績上位層が多く、しかも下位層が少ないのは前回と同様だが、各分野の得点が一段と上がり、平均得点は断トツの高さ。あまりの好成績に、「成績上位校だけの調査ではないか」といった疑念の声が上がるほどだが、もちろん調査は厳格に行われている。それでは、学力トップの要因は何か。継続的に上海の教育を研究している、新潟県教育総合研究センターの山本馨研究委員は「学校での授業水準の高さと均質性」と指摘する。個人プレーで奮闘している日本の教師たちと違って、思考力・活用力重視の授業をチームでつくり上げている上海の教育について、山本研究委員に分析してもらった。
【12月17日号】 東京で生活困窮者といえばホームレスを思い浮かべるが、地方にはまた違う実態がある。生活必需品である自家用車や家を所有し、3世代同居していることなどで生活保護を受けられないが、生活費や病気の治療費にも事欠くといったケースが少なくない。11月に山形市で開かれた、地方における生活困窮の実態を考えるシンポジウムの模様を伝える(特集「貧困でも生活保護受けられず」)。特集「多様化する保育所と経営」48回目は、医療・介護分野における営利法人の参入の状況や、それに関する議論を見た後、株式会社による保育所運営のメリットとデメリットなどを検証する。11月後期の「社説拝見」は「介護サービスの適正化とは何か」と題し、介護事業の市町村移管や地方公務員の年金規定をめぐる判決、国連の気候変動枠組み条約第19回締約国会議(COP19)などに関する各紙の論調を取り上げた。
【12月20日号】 亀田総合病院副院長の小松秀樹氏による「社会保障制度改革国民会議報告書を読む」は、医療・介護分野を2回にわたり取り上げた。医療計画制度や医療・介護サービスの在り方等について、報告書の内容をまとめ、それに対する意見を述べている。高血圧治療薬「ディオバン」の臨床研究をめぐるデータ不正問題で、名古屋大が「恣意(しい)的なデータ操作はなかった」とする中間報告を発表した。臨床研究を行った5大学のうち、データ操作を否定したのは4大学目で初めて(「名古屋大、データ操作を否定」)。「地域を支える」は、若者たちをサンタクロースとして養成する宇都宮社会福祉協議会のユニークな取り組みを紹介する。東日本大震災の避難者に贈り物を届けるボランティアだが、あえて「ボランティア」とは銘打たず、遊びの要素を取り入れて楽しみながら、結果として被災者支援につながるよう仕向けたのがミソだ。人の役に立ち、感謝されるという経験を通じて、若者の成長をサポートする狙いがある。シリーズ「医療・介護業が知っておきたい最新トラブル情報」最終回は、有給休暇や守秘義務、クレーム対応などについて解説する。
【12月17日号】 巻頭言で、星野泉明大教授が消費税の軽減税率について論じている。欧州では、欧州連合(EU)の規定で消費税の標準税率を15%以上と設定していることから軽減税率を導入する国が多いが、北欧では軽減税率の適用は少ない。特にデンマークは、標準税率は25%なのに、軽減税率はなく、ゼロ税率も新聞程度という。背景に、北欧では可処分所得に対する食費の割合が均一的という傾向があり、「要は、社会保障や雇用政策によって所得平準化が行われ生活水準が均一で公共料金も低ければ、生活必需品にかける割合もあまり変わらず、軽減税率を設定しなくても大きな問題にはならない」と解説する。日本では「格差社会」が叫ばれる昨今だが、生活水準が均一な社会はどうしたらつくれるか、思案のしどころと言える。「私の苦心」は大分県宇佐市を紹介。滞納整理の一環として差し押さえた動産を処分するためインターネット公売を導入する自治体が多いが、宇佐市はネット公売に加え、別府市と共に初めての公売会を開催。これを1回で終わらせず、継続開催してゆくことでノウハウを蓄積し、市民の納税意識の高揚につながらせたいと書いている。
【12月20日号】 「解説」欄で上場企業の9月中間決算について詳報した。売上高の合計は前年同期比10.3%増、経常利益は38.6%増。下期も引き続き好調を予測している。「私の苦心」は、滋賀県守山市の納税課を紹介。市町村の税務担当者のスキルアップを図る県職員派遣制度や国民健康保険料(税)徴収アドバイザー派遣事業を活用し、さまざまな指導を受ける中で、市の収納率が低迷している現状について「窓口対応を含め、事務の在り方や手法等をさらに見直す必要性も見えて」きたという。今後の取り組みに期待できそうだ。
【12月16日号】 「消費増税は最大のリスク要因」と題して、消費税率引き上げに関する解説記事を載せた。同記事は「アベノミクスは円安・株高といった形で好影響をもたらしたのみならず、実体経済にも着実に好影響を及ぼしている。こうした成長率の高まりに寄与しているのが、民間消費や設備投資、公共投資、輸出の増加である。だがこれらの動きはいまだ脆弱(ぜいじゃく)であって、消費税増税に耐えられる状態にはない。消費税増税は、デフレからの脱却と経済成長を志向する政策パッケージであるアベノミクスとは逆行する政策であり、当面最大のリスク要因である。政府の経済対策や減税措置は、消費税増税の悪影響を抑制するには不十分だ。出そろった経済対策や減税措置を踏まえると、金融政策の強化を進めることがまず必要であろう」と述べている。
【12月19日号】 「デフレ脱却の正念場」と題して、安倍政権が掲げるデフレからの脱却には、賃金の上昇が必要との解説記事を載せた。同記事は「アベノミクスとその一環である日銀の大胆な量的金融緩和を背景に株価は上昇、円高は修正され、企業収益も大きく改善した1年だった。実体経済も緩やかな回復基調にある。しかし、量的金融緩和だけではそれがいかに規模的に巨大でも、デフレ脱却、マイルド・インフレ達成は実現困難であろう。デフレ脱却には賃金増加が欠かせない」と述べ、その理由を挙げている。