【1月6日号】 月曜連載「地域防災最前線」は「防災白書を読み解く」の第16回。地震などの災害発生時における自治体の業務継続計画(BCP)を取り上げている。東日本大震災の経験からも分かるように、自治体にとって、非常時の業務継続性の確保は大きな課題だ。BCPに基づき、職員、庁舎、電力など業務継続に必要な資源を整えておくだけでなく、教育、訓練、計画・体制の点検など業務継続力を高めていく不断の取り組みが求められる。このうち「訓練」に関して、筆者は「職員の対応力を向上させるだけでなく、同時にBCPの実効性を点検し、問題点や教訓を把握するためにも大切です。毎年の図上訓練などを通じて、業務継続体制や計画を是正することが望まれます。(中略)重要な初動対応などについては、訓練を繰り返し、組織、職員間で共有するように努めましょう」と、その重要性を訴えている。
【1月9日号】 「市民は学んでいる。その回答の言質を取り、さらに責め込まれる。そこで初めて、対応に変わり、話を聞き、説明をするのだが、一度火が付いた苦情の消火には、時間と対策が必要になる。だが、それを組織内で持ち合わせている人はごくわずかで、しかも完璧ではないのである」。新連載「行政への苦情」がスタートした。筆者は「苦情の宝庫」ともいわれる百貨店で、お客様相談室長などを歴任、現在はその経験を基に「苦情・クレーム対応アドバイザー」として活動している。その筆者が、近い将来「行政が苦情に包まれる」と警告する。ところが、長い間苦情もなく、謝罪経験もない行政の現場には、指導できる先輩がいないばかりか、ノウハウの蓄積もないのが実情。筆者が「クレーマーの発生は、実は対応のミスから生まれている」と指摘するように、市民の意識の変化に思いが及ばないまま初期対応を誤ると、火に油を注ぐかのように、聞いたことがないような苦情の集中砲火を浴びる恐れがあるのだ。連載は「苦情とはどういうものであるか」から説き起こし、異業種の苦情対応の実例を織り交ぜながら、対策・対応の進め方について具体的に論じていく予定という。よくありがちな、相手の言葉の「否定」から会話に入るのは、実は最も不適切な苦情対応だということが分かる。
【1月10日号】 いじめ防止対策推進法の具体的な運用方法を定めた国の「いじめの防止等のための基本的な方針」がまとまり、都道府県の教育委員会などに通知された。地方自治体や学校現場では、同法に基づいた対応が求められる。教育識者インタビュー「あすの教育」では、基本方針策定のための有識者会議の副座長を務めた新井肇兵庫教育大学大学院教授に、基本方針の特徴やいじめ防止に向けて取り組むべき方策、注意点を聞いた。
【1月7日号】 2014年度、障害者スポーツの所管が厚生労働省から文部科学省に移る。これまで障害者の社会参加、自立支援という福祉的な色合いが濃かったものを、競技スポーツとして普及・発展させる好機だ。日本障害者スポーツ協会強化部長の中森邦男氏に、現状と展望を尋ねた(インタビュー「身近にスポーツを楽しめる環境づくりを」)。特集「多様化する保育所と経営」49回目は、「保育の質とは何か」と題し、国や自治体が保育の質を確保するためにどのような取り組みをしているか、また利用者アンケートの結果などから、保育の質について考える。「地域を支える」は、山形県のNPO法人「With優」を紹介する。居酒屋を舞台に、引きこもりの若者らの就労を支援している。厚労省は、初めて実施した「ブラック企業」調査の結果を発表。若者の離職率の高さなどから対象に選んだ5111事業所のうち、8割以上の企業で労働基準関係法令の違反が見つかったという(「8割超が法令違反」)。
【1月10日号】 再生医療の第一人者として知られる京大名誉教授の西川伸一氏が、理研を退職後、患者団体を支援するNPOを立ち上げた。第一線の研究から患者支援へと転身した経緯や、その目標、将来像などについて尋ねた(インタビュー「研究者から難病患者支援へ」)。連載「新刊図書の中から」で紹介してきた本を振り返って俯瞰(ふかん)すると、その年の社会の傾向がうかがえる。「2013年の傾向を探る」として、3回にわたり取り上げた。1回目は政治の動向や医療などについて。高血圧薬「ディオバン」の臨床研究をめぐるデータ操作問題で、千葉大が調査結果を発表。論文とカルテのデータに食い違いが見られるが、データ操作は確認できなかったとした。これで、研究に携わった5大学の調査結果が出そろった(「データ5〜8%食い違い」)。12月前期の「社説拝見」は、「親子関係、年金、男女共同参画を考える」と題し、生殖補助医療と親子関係をめぐる最高裁判決や年金制度などをめぐる各紙の論調を紹介する。
【1月7日号】 新年初号は、昨年末に編成された新年度予算案を概括する構成となっている。巻頭言では、石弘光一橋大教授が「消費税と共存する時代」と題し、1979年に大平正芳首相が一般消費税導入に失敗してから消費税増税定着までの経緯を振り返った。歴代政権が間接税の導入・強化を検討しては挫折する歴史が続いたが、2000年代に入り社会保障財源としてやむなしとする世論が高まり、国民に消費税と真っ向から向き合う姿勢ができたと指摘する。確かに、時代が変わったと感じる人は多いだろう。新春論文は片山善博慶大教授。税制改正案について「法人を優遇する半面、個人とりわけ弱者に冷たいとの批判は免れない」と厳しく指摘し、特に軽自動車税増税を問題視する。15年4月以降に取得した軽自動車の税額が現行の1.5倍に引き上げられるが、それまでに取得した車の場合は原則13年後から1.8倍になる。その際、市町村の担当職員はその課税の狙いを到底説明できなくなると予測し、与党税調や関係官庁に軽自動車税制だけでも再考するよう勧めている。読んでいて痛快だ。「私の苦心」欄では、東京都26市の中で市税収納率トップを走る国立市が、「収納率日本一」を目指す気概を語っている。
【1月10日号】 政府予算案を受けた形で、14年度地方税収見込みの資料などを掲載している。ニュース詳報では、今年の消費者物価や長期金利、為替、株価の動向について触れながら、金融政策の注目点は日銀の追加緩和の有無にあると指摘している。「私の苦心」欄は、青森県十和田市を紹介。以前携わったのは「税金を使わせていただく」仕事ばかりという税務課長が、地方税法の読解から苦労している姿を軽妙な語り口で描いている。
【1月6日号】 「消費増税後に景気下振れリスク」と題して、今年の日本経済と日銀の金融政策についての解説記事を載せた。同記事は「政府の月例経済報告で、景気の基調判断は2013年9月から12月まで4カ月連続で『緩やかに回復しつつある』という表現になった。日銀の景気判断は『緩やかに回復している』である。民間エコノミストの側でも、近い将来の景気後退局面入りを予測する向きは極めて少ない。今の日本経済は順調に推移しているという見方がコンセンサスである。しかし、そこで『思考停止』してはなるまい。需要項目別に7〜9月期の実質GDP(国内総生産)を見ると、景気の力強いけん引役が実は不在であることが浮かび上がる。足元の景気は公共投資の上積みや増税前の駆け込み需要など、広い意味での人為的な需要によって支えられている面が大きい。14年4月の消費税率引き上げ後については、景気の下振れリスクが意識される。政府・日銀による追加的な景気てこ入れ策は避けられまい。黒田東彦日銀総裁は株高・円安を維持するようなメッセージ発信を求められそうである」と述べている。
【1月9日号】 「医療改革を成長戦略の柱に(下)」と題して、日本の医療分野の問題点に関する解説記事を載せた。同記事は「三井物産は2011年4月、マレーシア国営投資会社カザナ・ナショナルの傘下企業で大手病院などを経営している持ち株会社IHHヘルスケアの株式30%を取得すると発表した。取得価格は33億リンギット(約924億円)。三井物産はなぜマレーシアに投資し、日本では投資しないのか。それは、投資できる対象の株式会社形態の病院が日本には存在しないからである。(上)で解説した通り世界の情勢は急激に変化し、かつては公的病院が主であったドイツでは株式会社形態の病院が3分の1を占め、米国でも株式会社形態の病院がシェアを拡大している。アジアなど新興諸国では株式会社形態が主体であり、今や病院の株式会社化が世界の潮流となっている。一方、わが国では1948年に導入された株式会社の参入規制が65年を経てもそのまま残り、病院市場の自由競争は否定され、既得権益が強く保護されている。この岩盤規制の撤廃は、なぜか「アベノミクス」の「成長戦略」でも議論されていないが、世界で急増している株式会社形態の病院が認められなければ、わが国の医療は競争力を失って衰退するしかないだろう」と述べている。