早読み行政誌

6秒間は何もしない(2014年1月20日〜24日号)

地方行政

【1月20日号】 あの豊田市が企業誘致? 自動車関連企業が集積し、企業城下町として知られる愛知県豊田市が、企業誘致に本腰を入れているという。2012年の製造業の売上高は9兆7000億円と、全国の市町村でトップ。他もうらやむ豊かな財政力を誇る自治体が、今なぜ企業誘致を仕掛けるのか。「脱『クルマ依存』を志向しているのでは」などと、さまざまな臆測を呼んでいる。「自動車の街」のイメージが強烈な同市だが、実際には森林が市域の70%を占め、都会も田舎もある多様性に富んだ都市だということは、あまり知られていない。こうした地元の生身の姿や暮らしやすさを訴え、次代への布石として企業誘致を進める、同市の取り組みについてリポートする(「目指すは脱『クルマ依存』? 企業誘致に本腰 愛知県豊田市」)。

【1月23日号】 木曜連載「行政への苦情」第3回は、統計分析に基づき、苦情やクレームを言う人の実像を浮かび上がらせている。例えば「あなたは嫌な思いをしたとき、何回に1回の割合で苦情を言いますか」との質問で、苦情を言う頻度が最も多かった年代は「60代」の「3.89回に1回」。これは、定年を過ぎる時期に重なり、職場から解放されて今まで我慢していたことを口にできる、あるいは雇用が切れたことに、ちょっとしたイラつきを感じる、といった背景があると推測される。一方職業別では、集計した8業種のうち、最も頻度が少なかったのが「金融サービス」の「5.95回に1回」。逆に、最も多かった職種は、何と「行政」で「4.17回に1回」だった。この意外な結果から、今後、苦情の矢面に立つケースが増えると予測される、行政職の実像を読み解く。

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内外教育

【1月21日号】 通常、金曜日号に掲載している小野田正利大阪大学大学院教授による連載「モンスター・ペアレント論を超えて」だが、1月14日号に続き、今号の「教育や学校は大事な『社会的共通資本』なのだ(下)」でも火曜日号に「進出」。ただでさえ多忙な小野田教授を執筆へと駆り立てているのは、国家戦略特区法による公設民営学校設置をはじめとした、教育に市場原理を持ち込む動きへの危機感だ。記事中で登場人物の一人が漏らす「学校の意義、公共サービスとは何か、公益とは何か、コミュニティーとは何かを、みんなで真剣に考えていくべき、正念場というより土壇場に来たということやなぁ」というセリフは、まさしく小野田教授の本音だろう。

【1月24日号】 茨城県土浦市立都和中学校が、全生徒を対象に「アンガーマネジメント」の講習会を実施した。アンガーマネジメントは、怒りなどの負の感情をコントロールし、うまく付き合う方法を学ぶもので、いじめや暴力行為など生徒間のトラブル防止に効果的という。そのポイントの一つが、「6秒ルール」。相手の言動にかっとなっても、怒りがピークにある6秒間だけは何もしないで待つことが、重要なのだという。講習会の様子をリポートした。

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厚生福祉

【1月21日号】 イギリスの「レンプロイ工場」は、障害者就業施設の最先端の成功事例として、世界の尊敬と注目を集めたという。その工場が、昨年10月末で閉鎖された。被護者から労働者へ─。障害者のニーズの変化、時代の変化が背景にある(巻頭言「レンプロイ工場の消滅」)。特集「新刊図書の中から 2013年の傾向を探る」最終回は、老いの生き方・死に方、健康・食・家族などのテーマで図書をまとめた。新刊図書を通じて、社会の動きが見えてくるのが興味深い。連載「ワンコイン健診の現場から」は、「クレームを歓迎せよ」と題し、利用者からの苦情を大切な情報として共有・活用することの重要性をつづっている。ベンチャー企業だけでなく、あらゆる現場に通じる話だ。「地域を支える」は、さいたま市の育児支援グループ「スマイルママコム」を紹介。「母親の笑顔と子どもの笑顔は切っても切れない関係」と、育児に追われる母親が自身の時間を持って輝けるように支援している。12月後期の「社説拝見」は、2014年度診療報酬改定やイタイイタイ病全面解決、改正生活保護法などをめぐる各紙の論調を紹介する。

【1月24日号】 過疎化し、高齢化していく地方。都会への人材流出は止まらない。災害の被災地では復興需要によって経済が活性化しているが、一時的なものにすぎない。地方で新たに産業を興し、雇用を生むにはどうすればよいのか。亀田総合病院副院長の小松秀樹氏は、若者の能力の高さとNPOの自由度に期待をかける(特別寄稿「地方の雇用創出」)。「地域を支える」は、大分県中津市の社会福祉法人「中津総合ケアセンターいずみの園」を紹介する。高齢者介護を中心に25の事業を展開、中でも注目は24時間365日対応のコールセンターによる訪問介護サービスだ。国が類似のサービスを制度化する前から導入している。徹底的に利用者本位に考え、事業を拡大してきたその姿勢は、示唆に富んでいる。いじめ自殺問題が大きくクローズアップされるきっかけとなった大津市立中2年の男子生徒の自殺で、生徒の父親が、いじめに関するアンケート結果を受け取る際に部外秘を確約させられ精神的苦痛を受けたと訴えた裁判。大津地裁は、市に30万円の支払いを命じた。市も既に否を認めて謝罪しているが、画期的な判決といえよう(「市に30万円賠償命じる」)。

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税務経理

【1月21日号】 「日本では法人税を引き下げて、企業が賃金を引き上げていくという好循環を創り出そうとしていると説明すれば、彼らは何故だと詰め寄るに違いない」。巻頭言で、政府税制調査会の幹部も務める神野直彦東大名誉教授が、法人税引き下げ問題について別の切り口を紹介している。欧米では、「法人税を重くして、企業が賃金を引き上げていく好循環を創り出すと説明すれば、納得するだろう」という。法人税を下げるから賃金を上げろという論理では、法人税が補助金の代わりになってしまう。思考パターンを変えるヒントになりそうだ。解説面では、昨年の税制改正をめぐり、毎年恒例の記者座談会で振り返ってもらった。秋の税制改正でほとんど固まっていた復興特別法人税の1前倒し廃止が正式に決まり、地方に欠かせない「足」となっている軽自動車への税額が1.5倍に引き上げられるなど、「企業に減税、個人に増税」の色彩が濃い税制改正。大枠は官邸主導で方向付けされた観が強く、秋の税制改正では野田毅自民党税制調査会長は「蚊帳の外」に置かれる場面もあった。かつては聖域と呼ばれるほど権威があった党税調とは様変わりで、野田氏は今年の漢字として「忍」を挙げているという。現状について、記者の「長期政権もうわさに上る首相側とは力関係に差がある」との指摘には納得する。「私の苦心」は松江税務署を紹介している。

【1月24日号】 毎年恒例の「主要各省別に見た税制改正」の連載をスタートさせた。年末の税制改正の最中にとても報道しきれなかった個別政策を詳述する企画で、今回は経済産業省、環境省、農水省を紹介。この後、厚生労働省、国土交通省、総務省、文部科学省が続く予定だ。「私の苦心」では、長崎県の県北振興局を紹介。市町村と連携した地方税回収機構の取り組みで、個人県民税を中心に徴収率が改善している状況などを説明している。

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金融財政ビジネス

【1月20日号】 「今年の中国経済の行方」と題して、中国経済の押さえるべきポイントについての解説記事を載せた。同記事は「10%成長が当たり前だった中国経済は、ここに来て急速に減速している。なぜだろうか。オーソドックスな近代経済学の枠組みで中国経済を考察しても、その急な変化を説明することはできない。そもそも中国経済のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)は、いわれているほど悪化していないはずである。サプライサイドを見ると、労働の供給と資本ストックのいずれも大きな落ち込みは確認されていない。短期的な景気変動を説明するには、需要サイドを考察する必要があり、一般家計の消費が盛り上がっていないことは確かである。輸出については、米国を中心に先進国の消費が徐々に回復していることから、中国にとって外需はそれほど弱くないはずだ。中国経済の急減速を解明するには、内需を詳しく考察する必要がある」と述べている。

【1月23日号】 「14年、世界経済のトレンドは」と題して、日本を含む今年の世界経済についての解説記事を載せた。同記事は「2013年末に1万6000円台を付け、終値として13年の最高値で引けた日経平均株価であったが、年明け早々はかばかしくないといった声が続いている。昨年10月1日に政府は消費税率を今年4月から8%に引き上げることを閣議決定し、さらに15年に10%へ引き上げることを予定しているが、甘利明経済財政担当相が1月12日に消費税率を10%へ引き上げるかどうかの判断は今年12月になるとの見通しを示すと、翌営業日の日経平均は取引開始直後から大幅下落をするという大変不安定な動きとなっている。本稿では、今年の主要国の経済展望とともに、目下の最大の懸念材料とされている消費税について、増税後の経済的影響も含め考えてみたい」と述べている。

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