早読み行政誌

あえて国の制度の枠外に(2014年3月25日〜28日号)

地方行政

【3月27日号】 「行政には、公平性が求められる。制度設計のみならず、執行においても国民、住民がその中に公平性を感じ、納得できないと行政に対する信頼性をなくす。(中略)行政と公平の間には厳しい緊張関係が存在し、公務員にとって行政における公平というテーマは避けて通れないものと言える。問題は、具体的な政策やその執行において公平を実現することが極めて困難であるという点にある」。木曜隔週連載「公務員講座」第9回は、行政における公平とは何か、なぜ行政における公平を実現することが困難なのかについて考える。限られた財源の中で必要な支援を行おうとすると、どこかで対象者を限定せざるを得なくなる。そこでどう公平性を確保するか。「格差」が顕在化してきた昨今だけに、公平性の確保は、ますます大きく、重い課題だ。公務員として「公平性とどう向かい合うべきか」を考えるヒントにしていただきたい。木曜連載「行政への苦情」第10回は、民間の苦情対応の実例を紹介。具体的な失敗事例とそこから得た教訓が、何よりも役に立つ。「東日本大震災3年インタビュー」第4回は、復興の現状と課題について、達増拓也岩手県知事に聞いている。

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内外教育

【3月25日号】 「ロボットと学ぶ、ロボットを学ぶ」─。関西文化学術研究都市(愛称・けいはんな学研都市)の中心部に位置する京都府精華町。多くの研究所が立地する環境を生かし、子どもたちの「科学する心」を育む試みが進行している。町立小学校では、ロボットが理科の授業に加わる実験を実施。住民が主導し、大学生らが支援するロボット講習会も活発だ。2月には、若手研究者と子どもたちが交流する「科学のまちの子どもたち ロボットフェスティバル」が初めて開催された。関西文化学術研究都市推進機構の常山広コーディネーターが、それぞれの取り組みを紹介している。

【3月28日号】 果たして教育委員会制度は「守られた」のか─。日本教育学会など70団体でつくる「教育関連学会連絡協議会」が3月15日、シンポジウム「教育委員会をどう考えるか」を開催した。中央教育審議会の教育制度分科会長を務めた小川正人放送大学教授らが、中教審の審議過程やその後の与党協議について検証したが、教育委員会を執行機関として残すという意味で「現行の教育委員会制度を守ることができた」としたのが、同教授の見解。一方、小野田正利大阪大学大学院教授は「モンスター・ペアレント論を超えて」の中で「執行機関として残ったことに安堵(あんど)する者がいる。そのような理解は“大甘過ぎる”。…もはや総合教育会議で『策定した方針の下、それぞれの所管する事務を執行する』という意味で『執行するだけの執行機関』になっていることに気付くべきだろう」と断ずる。

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厚生福祉

【3月25日号】 連載終盤を迎えた特集「多様化する保育所と経営」57回目は、前回に続いて小規模保育事業に焦点をあてる。子ども・子育て新制度の中でも、待機児童対策として特に期待される同事業だが、既に先行して取り組んでいる自治体がある。それらの事業の内容や、新制度への移行に際して生じる問題などを見ていく。「進言」は松江市健康福祉部長の山中豊氏が、市の救急医療についてつづる。3次救急病院の救急専門医が不在になるなど、危機にひんした救急医療体制を守るために講じた策は、他の自治体にとっても参考になりそうだ。「地域を支える」は、宮崎市のホームホスピス「かあさんの家」を紹介する。手厚い医療や介護が必要な人が、最期まで地域の中で過ごせるようにと開設された、もう一つの「家」だ。個々のニーズに合わせ、どんな状態の人でも、どんな利用形態でも受け入れる自由さを維持するため、あえて国の制度の枠外にとどまる。全国的に注目されており、各地で追随する動きも出ている。特集「都道府県・政令都市2014年度厚生・労働・環境関係予算」8回目は、愛媛県、福岡市、京都府。

【3月28日号】 「私は言った」。介護などの現場で他の職種とともに仕事をする際、結果が伴わなくても、自分はちゃんと伝えたのだから役割はおしまいと思ってしまいがちだ。しかし、きちんと相手に伝わり多職種連携が機能したとき、利用者の状態が改善し、ともに喜び合えることに気付く。社会福祉法人新生会名誉理事長・石原美智子氏の巻頭言は、医療、介護にとどまらず大事な示唆を与えてくれる。昨年1月、日本初の卵子提供者(ドナー)登録団体が発足した。第三者からの卵子提供は、日本では無償などを条件に容認する報告書を厚生労働省の検討会がまとめたが、法制化には至らず10年が経過。「普通の専業主婦」から、倫理的な課題も多い生殖補助医療の世界に飛び込んだNPO理事長の岸本佐智子さんに話を聞いた(インタビュー「生殖補助医療 患者の声が励み、手探りの毎日」)。「世紀の発見」から一転、論文にさまざまな不備が指摘されたSTAP細胞で、理化学研究所が調査の中間報告を発表。まだ捏造(ねつぞう)とまではいえないものの、論文の重要な画像が博士論文の使い回しであることが判明、発見の真偽がますます疑わしくなってきてしまった(特集「STAP細胞 重要画像、博士論文と同一」)。特集「都道府県・政令都市2014年度厚生・労働・環境関係予算」9回目は、宮城県、新潟県、京都市。

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税務経理

【3月25日号】 「直言苦言」コーナーで、Y氏が公金徴収対策について論じている。国民健康保険料(税)の滞納問題では、関連法に地方税の滞納処分同様に対応できることが定められており、悪質な滞納者に対しては差し押さえなど強い態度で臨む自治体も増えている。しかし「学校給食費、公営住宅家賃等のように、地方税の滞納処分の例により執行できるという法律的な根拠がない場合には、料金等の債権をどのように回収するか、戸惑いが生じる」と指摘。回収手続きを盛り込んだ法律を制定するよう提唱した。「私の苦心」は山梨県税務課を紹介。税務システム更新時に、名寄せの苦労を軽減する手法を考案した苦労話で、例えば「瀧澤國榮」を「滝沢国栄」と同一と判断できるという。住所も、アパート名の記載がなくても検索しやすいそうで、画期的システムのようだが、それでも微妙な番地違いなどには確認の手間がかかってしまう。今後、共通番号(マイナンバー)が導入されるとはいえ、「名寄せとの戦いは続くのではないでしょうか」と、ぼやきたい気持ちは分かる。全国特集「都道府県・政令市 2014・2013年度の税収見通し」は、京都府、愛媛県、沖縄県、神戸市を掲載した。

【3月28日号】 政府税制調査会の中心人物の一人でもある神野直彦東大名誉教授が巻頭言で日欧の社会保障体系の違いについて論じている。ヨーロッパ社会経済モデルを採用している欧州各国との決定的相違は教育と住宅にある。欧米では大学といえば国立か公立で、授業料も原則無料。これは「欧州モデルでは、教育は公共財だと考えられていることを意味している」という。一方、日本も公共財(公が提供する財・サービス)として義務教育などを実施しているが、大学授業料の高いことや私塾の発達を見れば、教育を市場財として考える性格が強い。住宅政策も、欧州モデルでは基本的に社会保障に位置付けられ、賃料が高い場合には社会保障省から補助される。このため欧州モデルの家計支出構造を見ると「教育費と住宅費の項目は無視できるほどの低さ」と明かす。その上で「こうした家計支出の相違の下で、日本で消費税を増税しようとすれば家計の反発が強くなるのは当然である」と指摘する。安倍政権の下で政府税調は法人税減税について検討を始めているが、国民の理解を得られる水準を見誤らないよう念じたい。「私の苦心」は那覇税務署を紹介。都道府県・政令市の税収見通しは、宮城県、山梨県、広島県、大阪市を掲載した。

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金融財政ビジネス

【3月27日号】 「金融・資本市場のリスク度を測る」と題して、世界の金融市場の動きを示す指数についての解説記事を載せた。同記事は「グローバルな金融・資本市場は、投資家のリスク許容度が上昇する『リスクオン』局面と、反対にリスク回避傾向が強まる『リスクオフ』の局面の間で大きく揺れ動いてきた。筆者は国際通貨研究所(IIMA)と共同でこのようなリスク要因を指数化して計測する手法を考案し、IIMA−GMVI(Global Market Volatility Index)として公表している」と紹介した上で、その算出方法と読み方を示している。

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