早読み行政誌

ケアする側を支える仕組み(2014年5月12日〜16日号)

地方行政

【5月15日号】 全国有数のマグロ、カツオの水揚げを誇る静岡県焼津市が、市役所の日常業務に使う端末を、4月から全面的にタブレットに切り替えた。自治体では、屋外で情報収集するときなどモバイル環境でタブレットを活用する例はあるが、庁内業務も含め、全職員にタブレットを配備するのは全国初とみられる。使い勝手やコスト、セキュリティーなど、市でどのような検討がなされ、導入に踏み切ることになったのか。利便性や安全性が実証されれば、焼津に追随する自治体も増えてきそうだ。木曜隔週連載「公務員講座」(12)は「良い公共政策とは何か」について考える。住民のニーズをどのように把握し、専門性をどう生かすか、何をもって優先順位が高いと判断するかなど、「良い公共政策」をめぐる課題を多角的に検討している。木曜連載「行政への苦情」(16)は、今後自治体が一番手を焼くであろう新手のクレーマー「リタメイト」を紹介。リタメイトとは筆者の造語で、管理職だった現役時代の追懐に駆られてクレームを申し入れ、対応者を相手に現役当時の感覚を楽しむ、団塊世代の定年退職者を指す。かつて筆者が百貨店で遭遇したリタメイトとのやりとりが参考になる。

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内外教育

【5月13日号】 今号から、国立教育政策研究所の篠原真子総括研究官による新連載「PISAが描く世界の学力マップ」がスタートした。経済協力開発機構(OECD)が3年ごとに実施している「生徒の学習到達度調査(PISA)」は、結果が発表されるごとに、参加各国で大きな反響を呼んでいる。昨年末に公表された2012年調査で、日本の生徒の学力が「V字回復した」と大きく報じられたのは、記憶に新しい。新連載は、過去5回の調査のデータから、各国の成績と、その背景要因がどのような変化を見せ、どのような状況にあったかを分析し、「世界の学力マップ」の変遷を描こうという意欲的な試みだ。毎週火曜日号に半年にわたって掲載する予定。

【5月16日号】 国立青少年教育振興機構は、2012年度の「青少年の体験活動等に関する実態調査」の報告書をまとめた。06年度から実施しているもので、今回は国際的に低いといわれる自己肯定感に着目するとともに、保護者の関わりについても詳細に調査を行った。それによると、自然体験の割合が14年前の水準に回復。生活体験も豊富になり、生活習慣にも改善傾向が見られた。また、自然体験や生活体験が豊富なほど自己肯定感は高くなり、体力に自信が付き、道徳観・正義感も向上したという。さらに、保護者の関わりが多い子ほど自然体験や生活体験が豊富になり、基本的生活習慣も身につくといった傾向が明らかになっている。

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厚生福祉

【5月13日号】 特集「東日本大震災 被災障害者の状況と課題」最終回は、現実として被災障害者が直面する三つの課題について述べている。それに先立ち、筆者の障害者授産施設コンサルタント、中谷靖氏は「ダイバシティマネジメント」というキーワードを掲げる。これは「企業や行政などが多様な人材を確保して、その個性と才能を経営に生かし、新たな経営成果を創造する人材活用戦略」のことだ。多様な人材には、障害者や難病患者ら、これまで十分に活用されてこなかった人たちも含まれる。障害者が普通に生活できる「ノーマライゼーション」のさらに先を行く考え方といえよう。「地域を支える」は、和歌山県の交流スペース「ぼちぼちIKOKA」を紹介する。家族の介護をする人や介護職員が気軽に立寄り、お茶を飲みながら日ごろの悩みを打ち明けられる、ケアする人のためのカフェだ。ケアする側は行政などの支援の対象から外れているが、疲れやストレスを抱えており、支える仕組みが必要だという。注目される取り組みだ。特集「都道府県・政令都市2014年度厚生・労働・環境関係予算」18回目は、相模原市、兵庫県、徳島県。4月前期の「社説拝見」は「高齢者が自宅で生活できる仕組みを」と題し、年金・介護・独居高齢者問題、白血病治療薬の臨床研究不正などをめぐる各紙の論調を紹介する。

【5月16日号】 全国訪問看護事業協会会長・伊藤雅治氏の巻頭言のタイトルは「地域包括ケアと訪問看護」。地域包括ケアは言うまでもなく国・行政が最重要課題として取り組んでいるが、そこで重要な鍵を握るのが訪問看護だ。これまで「看護」をめぐる政策は病院看護が中心だったところ、燃え尽きや低賃金など訪問看護が直面する課題を解決することが急務だと提言している。多民族国家であるオーストラリアでは、さまざまな文化的・言語的背景を持つ高齢者のケアが課題となっており、政府はそうした人たちへのケア政策に予算を投入して力を入れている。移民の受け入れが少ない日本とは状況が異なるものの、高齢化に伴い増え続ける社会保障費の問題や、多様なニーズに対するケアの在り方など、日本にとっても参考になる点が多い。2回にわたりリポートする(特集「海外の高齢者ケア オーストラリアにおける高齢移民ケア政策」)。民間の有識者らでつくる「日本創成会議」が、2040年には約半数の自治体で若年女性が半分以下に減り、523自治体について「消滅の可能性が高い」とする分析を発表した。人口減は国にとっても自治体にとっても重大問題だが、改めてその深刻さを突き付けた(「896自治体で若年女性半減」)。特集「都道府県・政令都市2014年度厚生・労働・環境関係予算」19回目は、岐阜県、堺市、長崎県。

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税務経理

【5月13日号】 消費税率引き上げが実施されて1カ月余りがたったのを機に、ニュース詳報で各業界の反応や政府の対応をまとめた。「私の苦心」では、北九州市東部市税事務所を紹介。同所では事務改善運動の一環として、効果が薄れている夜間の電話催促を全廃。昼間の催告に集中的に取り組んだ結果、今年3月時点で差し押さえ件数は約45%増、収入率は0.8ポイント上昇、しかも職員60人で年間延べ1840時間の残業時間削減になったと披露している。ついでにファイナンシャルプランナー2級の資格取得を奨励し、11人が合格したというから、その能力が公務に生かされることを望みたい。連載中の全国特集「都道府県・政令市 2014・2013年度の税収見通し」は、埼玉県、三重県、宮崎県を掲載した。

【5月16日号】 毎月掲載している全国地方銀行協会の地方天気図について紹介しておこう。同協会がホームページ上で発表している地方ごとの経済動向を要約して載せており、4月分の背景となっているデータの大半は3月の各地域の経済活動に基づく。天気図では、50を「好転」「悪化」の分岐点とする景況判断DIを公表しており、4月は71.9で「緩やかな回復」を維持したが、3カ月後の見通しは35.7。見通し判断はピークの昨年12月に72.2を記録していたので、今回で半減した。消費税増税による反動減への懸念がくっきりと表れており、地銀の情報網を使った情勢分析にも関心がもたれる。「私の苦心」は、福井税務署を紹介。都道府県・政令市の税収見通しは、長野県、岐阜県、和歌山県を掲載した。

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金融財政ビジネス

【5月12日号】 「東京五輪の経済効果と観光振興」と題して、東京五輪についての解説記事を載せた。同記事は「2013年9月に決定した20年の東京夏季五輪開催の経済効果に期待が集まっている。五輪開催の経済効果には、競技会場の新設や大会運営支出など五輪によって発生する直接的な効果と、五輪開催が後押しとなって生じる都市インフラ整備の加速や訪日外客による観光消費などの付随的な効果がある。みずほ総合研究所では、五輪開催の直接効果を1兆円程度(新規需要額)と予測している。しかし、より期待されるのは、『付随効果』の極大化である。とりわけ、訪日外客が増加する効果が期待される。13年の訪日外客数は1000万人を突破した。円安や東アジア諸国に対するビザ発給要件の緩和などもあって、アジア諸国からの訪日数が全体をけん引した。過去の五輪開催国ではいずれも、インバウンド観光客数が五輪開催前のトレンドを上回って推移しており、五輪開催決定を機に今後、訪日外客数が一層拡大することが期待される。日本を訪れるインバウンド観光客数がどの程度増えるのか、また、その経済効果はどれくらいの規模になりうるか、さらに、経済効果を実現するにはどのような戦略が考えられるのかを、シドニー五輪の際の観光政策などを参考に検討する」と述べている。

【5月15日号】 「バランスシートにみる企業マインドの萎縮」と題して、日本企業の現状についての解説記事を載せた。同記事は「日本の部門別の貯蓄投資バランスをみると、弱い基調の家計消費、企業による投資の低迷、大幅な財政赤字という組み合わせになっており、経済活力の停滞が強くにじみ出ている。民間非金融法人企業の12年末負債残高は655兆円で、1995年末と比べて210兆円減っている。法人企業部門の時価ベースの自己資本比率は大きく上昇しており、現在の企業部門は、相当に萎縮した状態であると考えられる。現状を踏まえると、税制改革の戦略としては、当面は大胆な設備投資減税を措置してリスクをとる企業を後押しするとともに、それによって時間が確保される間に、税率引き下げを含めてより広範な法人税改革の議論を深めるのが望ましい。政府の成長戦略が奏功しているかどうかは、企業部門の資金余剰幅が縮小に向かうかどうかで、差し当たり判断できるだろう」と述べている。

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