【6月2日号】 特集「行政サービス」は、5月に「早稲田公共経営研究会」が催したシンポジウムの模様を報告する。同研究会は、早稲田大大学院公共経営研究科の修了生らで構成する組織で、研究報告会に合わせ、公共経営に携わる専門家を招いたシンポジウムを開いている。今回は、自治体がビジネス的手法や市場の力を取り入れて行政目的の実現を目指す「行政ビジネス」がテーマ。福井県が取り組む「恐竜ビジネスブランド化推進事業」や、東京都の「水ビジネス」事業の現状が紹介された。福井県の山田賢一産業労働部長は、行政ビジネスの目的を考える上で、新たな投資でどれだけのリターンが得られるかという「投資とリターンの観点」が重要だと強調する。例えば、県立恐竜博物館の入場者が10万人増えれば、8億6400万円の観光消費額が出るといった具合だ。自治体の選択肢として最近注目されつつある行政ビジネス。参加者の発言から、行政がどこまで手を出し、住民にどれだけ利益があるのか、一過性ではなく持続可能なビジネスを確立できるか、といった導入のポイントが浮かび上がる。
【6月6日号】 法的な観点から教育に関わるさまざまな事象を解説する「教育法規あらかると」は、本誌の人気コーナーとなっている。今回は、教育委員会制度改革でポイントとなる総合教育会議がテーマ。「総合教育会議では何を審議するのか」「同会議で、首長と教育委員会の間で協議が調わない場合は、果たしてどうなるのか」─。国会審議での文部科学省担当者の答弁を基に、菱村幸彦国立教育政策研究所名誉所員が、総合教育会議の具体像を浮き彫りにしている。
【6月6日号】 福井県立病院は、がん陽子線治療に「世界初」となる新システムを導入した。がんの形状に合わせて高い精度で照射するため副作用を軽減でき、日々の生理的な動きにより位置がずれるがんにも対応しやすくなるという(特集「先端医療 高精度のがん治療で副作用防ぐ」)。千葉県館山市に今春、看護師を養成する「安房医療福祉専門学校」が開校した。運営する社会福祉法人太陽会の亀田信介理事長が学校設立に至った背景や理念をつづった特別寄稿「看護教育7つの認識」を掲載。単なる看護学校の話ではなく、まさに地域づくりの視点だ。「地域を支える」は、千葉県匝瑳市社協の「あんしん箱」配布事業を紹介。高齢者が自宅で急に倒れた場合などに必要となる物を入れておく段ボール箱で、九州地方などで先行されているという。核家族化が進み、独居高齢者が増える中で高齢者の見守りは大きな課題となっているが、その一つとしてさりげなく気の利いた取り組みだ。連載「私たちの工夫」は、西宮年金事務所長の丸田勝氏が、「サービス業を意識した窓口対応」についてつづる。来所する人を気持ちよく迎え、気持ちよく帰ってもらいたい─。その思いが、四季折々きれいに咲く花に表れている。
【6月3日号】 今号から新たなシリーズとして「新地方公会計 その展望」が始まった。現行の単式簿記・現金主義会計の地方財政には「試算・負債などのストック情報が見えにくい」などの指摘があり、総務省の研究会が4月末、地方財政に企業会計の考え方を導入する新地方公会計の報告書をまとめた。2015年1月に地方に対して3年程度で反映するよう求める予定で、地方公共団体は新方式の財務書類などを作成することになる。それが地方の財政運営にどのような変化をもたらすのかを解説していく企画だ。総務省は細部を詰める作業を続けており、同時進行の分析物としても読んでいただきたい。巻頭言は、政府税制調査会の要でもある神野直彦東大名誉教授の「ドイツに学ぶ法人税改革」。数年前にドイツが法人税率を10%も引き下げたところ税収が増加し、「法人税パラドックス」の好例とされているが、ドイツは減税に併せて、損金算入などを厳格化して課税ベースを拡大させたことを紹介。「法人税の実効税率を引き下げるにしても、課税ベース拡大の範囲内にとどめるべきである」とくぎを刺している。
【6月6日号】 「私の苦心」では、川崎市の小川湧三税理士が、消費税の複数税率導入問題について前号との2回連載で寄稿している。インボイス(仕入れ所)方式や給付付き税額控除などには問題点が多い上、本当に配慮すべきなのは低所得者層ではなく、生活保護世帯など「社会的弱者」であると指摘。こうした社会的弱者に限定した解決策として、対象世帯に特殊なタックスカードを交付し、カードを提示して物品等を購入すれば軽減・免税価格となり、事業者には消費税分が政府から補填(ほてん)されるというシステムの構築を提唱している。新たな技術を応用すれば、実現できそうなアイデアと言える。
【6月5日号】 「中国人の思考と行動原理」と題して、現代中国の背景を解説する記事を載せた。同記事は「中国人の思考回路や行動原理はやや特殊な面があるため、中国でのビジネスリスクへの対応もそういう観点から行わなければならない」と指摘した上で、「中国ビジネスには、『経営破綻リスク』、『事業短命化リスク』、そして『政治影響リスク』の三つが存在する。経営破綻リスクを避けるためには、まずは相手の『発展』という大義を認めてやらなければならない。また、事業短命化リスクを回避するには人材育成が重要であり、会社経営に参画する人が増えて事業の継続を考えられるようにする必要がある。一方、政治問題が原因で取引や販売に影響が及ぶ政治影響リスクは、中国ビジネスの中に身を投じてさえいれば、損失をかなりの程度軽減できる」と述べている。