早読み行政誌

絶望的に遠い出口(2014年7月14日〜18日号)

地方行政

【7月14日号】 1994年、ある市の職員が、生活保護で暮らす高齢の女性に「ルームクーラーを撤去しないと来年度から生活保護費が出せなくなります」と、クーラーの撤去を迫った。この年の夏も猛暑だった。市は、生活保護を所管する当時の厚生省(現厚生労働省)の基準に従った対応だと説明したが、この件が全国に報道されると「何と冷酷な行政か」と、市側を批判する声が上がった。たとえ「冷酷な行政」と非難されても、市は国の基準に従わざるを得なかったのだろうか。「自治体の主人公は市民である」を基本に、理論と実践の創造を目指す「自治体学」の立場から、この問題にアプローチする(「理論と実践の創造・北海道自治体学土曜講座」)。

【7月17日号】 食生活プロデューサー・金丸弘美氏の新連載「新・地域力と地域創造」が始まった。第1回は、三重県伊賀市の「伊賀の里 モクモク手づくりファーム」を取り上げる。農業生産・加工・販売までを手掛け、全国から注目を集める農業経営体だ。農産物の直売、レストラン、体験工房、牧場、宿泊施設などの運営に続き、モクモクの新たな展開として注目されるのが通販事業。商品を紹介する「モクモク直販カタログ」も、驚くほどの充実ぶりを示している。食と農業を中核に、新たな地域産業として成長を続けるモクモクの今をリポートする。

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内外教育

【7月15日号】 全国特別支援学校長会(全特長)はこのほど、第51回研究大会を東京都渋谷区の国立オリンピック記念青少年センターで3日間にわたり開いた。初日の総会では、兵馬孝周会長(東京都立青鳥特別支援学校長)が退任し、代わって都立多摩桜の丘学園の杉野学校長が第33代会長に就任するなどの2014年度役員案を承認。杉野新会長は就任あいさつで「幼稚園、小学校、中学校、高等学校などとの連携・協力を、地域の中で丁寧に進めていかなくてはいけない」と呼び掛けた。研究大会の模様を詳報した。

【7月18日号】 インタビュー企画「教育長はこう考える」に今号登場したのは、2000年4月から4期にわたり、福岡県古賀市の教育行政を引っ張ってきた荒木隆教育長。「学力」と「体力」両面をバランスよく伸ばすことで、子どもたちの「生きる力」を育む教育を実践している。その一方、教師の負担軽減策や保護者の経費負担削減などにも積極的に取り組み、「教育委員会の仕事は子どもたちのために学校現場や家庭を下支えすること」と強調する。一連の取り組みは、学校現場と家庭の連携強化につながり、一人一人の子どもへのきめ細やかな対応が実現したという。

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厚生福祉

【7月15日号】 知的障害者施設堤塾塾長・堤保敏氏の巻頭言は、身の回りの出来事を会話中心につづるエッセー風。今回のタイトルは「仕返し」。ネズミとカラスに仕返しを受けたといううそのようなホントの話だが、最後にさりげなく「共存」を説くあたり、単なる軽妙なエッセーでは済ませない。特集「サ高住の現状と課題」10回目は、サ高住の整備に向けた補助金、税制優遇、融資の内容を取り上げる。新築や改修などに対する政府の補助金は、宗教法人を除き、民間事業者や社会福祉法人、医療法人などサ高住を整備する事業者に広く交付されるが、なかなか複雑なようだ。「インタビュールーム」は、札幌医科大学の舛森直哉教授。性同一性障害(GID)の診療に10年以上前から携わっている国内先駆者の一人で、10年間の環境の変化や今後の課題などを尋ねた。

【7月18日号】 国立がん研究センターは、2014年のがん統計(予測値)を発表した。その年の数値を発表するのは初めてだ。がん統計、中でも罹患(りかん)数については、5月に発表した10年の全国推測値が最新のデータで、直近の状況とのタイムラグが問題だった。米国で毎年初めにその年の予測値を発表しているのを参考に、予測手法を開発した(「がん統計 今年の予測値を初めて発表」)。市町村国民健康保険の見直しを議論している国と地方の協議会が中間整理案をまとめた。赤字体質改善に向けて、基金創設を検討することが盛り込まれている。今後の制度設計が注目される(「財政安定化へ基金検討」)。高血圧治療薬ディオバンをめぐる論文改ざん事件で、東京地検特捜部は別の論文の改ざんにも関与した疑いで、ノバルティス社元社員を再逮捕した。日本の臨床研究に対する信頼を揺るがした事件の全容解明が待たれる。6月後期の「社説拝見」は、医療・介護総合推進法の成立や、社会福祉法人改革などをめぐる各紙の論調を紹介する。

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税務経理

【7月15日号】 「消費税率10%時」に導入することで自民、公明両党が合意している軽減税率をめぐり、与党税制調査会が8日から関連団体ヒアリングを開始したことをニュース詳報欄で取り上げた。経団連、連合、全国消費者団体連絡会、日本税理士連合会などいずれも反対。税収が下がる、「逆進性」の緩和効果には疑問がある、線引きが難しく国民が混乱する—などが理由で、ほとんど予想通りの指摘だ。今後、農業団体などが賛成するとみられるが、どのように意見集約していくのか注目したい。「私の苦心」は、相模原市税務部の債権対策課を紹介。市税だけでなく、国民健康保険税や保育所保険料などの公債権や私債権の滞納分まで引き受ける同課では、強制徴収するか徴収困難とするか、など仕訳しているが、「負担の公平性」に苦心しているという。市税でも個別では判断が難しいケースが多いが、税外債権では「それぞれ複雑な事情を抱え一律に判断できないケースばかり」と嘆く。現場の声は切実だ。

【7月18日号】 総務省が公表した2013年度地方税収の決算見込みを税制・税務のコーナーと巻末資料で掲載した。これを受け本誌では、各都道府県・政令市の税収決算見込みを29日号から全国特集として掲載していく予定だ。「私の苦心」は、宮城県美里町の徴収対策課長が登場。09年度から3年間、県地方税滞納整理機構に在籍した経験を踏まえ、同課では「滞納整理は是々非々で、絶対引かない対応」を合言葉に取り組んだ。それにより4億5000万円あった滞納繰越額を2年間で2億円減少させた。現在は債権管理条例制定の検討に入っており、着実に前進しているもようだ。

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金融財政ビジネス

【7月14日号】 「マイナンバーと税制」と題して、2016年1月から始まる「社会保障と税の共通番号(マイナンバー)制度」を解説する記事を載せた。この制度では、生涯変わらない番号が個人に交付され、情報提供等記録開示システム(マイポータル)という個人用のホームページも設置される。このシステムにより、本人の申請を前提にしたこれまでの行政サービスから、行政が個人にお知らせする「プッシュ型行政」という利便性の高いサービスの構築が可能になる。詳細は本誌で。

【7月17日号】 「容易でない金融緩和の出口策」と題して、リーマン・ショック後に先進国が採用した空前の金融緩和政策からの出口戦略を解説する記事を載せた。現状は、英国、米国では既に緩和策の終了から利上げが視野に入るようになり、日本でもほぼ完全雇用状態になって、デフレからインフレにフェイズが変わってきた。しかし、ひとたび政策転換がなされた場合のリアクションは極めて大きいとみられている。とりわけ相対的には米連邦準備制度理事会(FRB)を大きく上回る資産を抱える日銀にとって、出口は絶望的に遠いというのが筆者の見方だ。

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