早読み行政誌

住民がサービス求め移動する(2014年9月1日〜5日号)

地方行政

【9月1日号】 月曜連載「地域防災最前線」第62回は、広島市で先月発生した大規模な土砂災害を取り上げている。今回、被害が出た地域の多くが、土砂災害防止法の「警戒区域」に指定されていなかったことが問題になった。指定の遅れには、住民の合意形成への配慮などが背景にあるとみられ、筆者は「これを一概に責めることができるだろうか」と指摘。仮に警戒区域に指定されていたとしても、「現在の技術、制度、態勢の下では、これ以上の対応はほぼ困難であった」との見方を提示する。今回の災害対応については議論があるが、その検証は応急対応が落ち着いた時点から、「感情的に責任を追及するのではなく、次の災害被害を軽減することを目的に客観的に行うのが望ましい」と訴える。

【9月4日号】 連載「新・地域力と地域創造」第4回は、筆者がベトナムの農村を訪れた際の体験がつづられている。昭和30年代の日本の田舎を思わせる風景、確実に存在する有機農業へのニーズ、鳥獣被害がまったくない農村、土地に適合した在来種のコメ栽培の見直しなど、筆者が見聞した興味深い話題が提示される。経済発展が著しいベトナムだが、主な産業は農業。現地で日本のNPOが手掛ける、野菜の直販やアヒル・鶏の飼育などを通して農家の経済的自立を目指す指導は、小さな農家に無理のない等身大のアドバイスだと次第に広まり、信頼を得ているという。ベトナムの描写を通して、日本の農業、そして経済援助の在り方について考えさせられる。

地方行政表紙 地方行政とは

内外教育

【9月2日号】 第29回時事通信社「教育奨励賞」の推薦61校の取り組みを「推薦校の実践」と題して、8月22日号から順次掲載している。今号は愛媛県立西条高等学校と秋田県鹿角市立十和田中学校の取り組みを紹介。西条高校は「世界に羽ばたく」理系人材の育成、十和田中学は、地域密着型のキャリア教育に、それぞれ力を入れている。創造性あふれる各校の取り組みは、日本の学校教育の持つ底力を伝えてくれる。

【9月5日号】 経済協力開発機構(OECD)の「生徒の学習到達度調査」(PISA)2009、12年の結果で、中国・上海市が連続で、他を大きく引き離してトップとなった。継続的に上海の教育事情を調査している新潟県教育総合研究センター(新潟総研)によると、その決定的な要因は、授業水準の高さ・均質性。こうしたレベルの高い授業を市全域で可能にするシステムをより詳細に把握するため、新潟総研は14年度早々、再度の調査団を上海市に派遣した。その調査結果の概要を最新の教育改革の動向も交じえ、3回にわたって報告してもらった。

内外教育表紙 地方行政とは

厚生福祉

【9月2日号】 スリーA予防デイサービス折り梅所長、増田未知子氏の巻頭言は「認知症からのカムバック」。5カ月前からデイサービスを利用している72歳女性の回復の様子をつづっている。希望を与える文章だ。特集「サ高住の現状と課題」15回目は、「登録基準、サービス実施への自治体の対応を見る」と題し、政府が定めたサ高住の登録基準を強化または緩和する自治体の動きについて見ていく。今回は、北海道、大阪府、東京都、埼玉県の対応を取り上げた。「進言」は福井市の河上芳夫福祉保健部長。健康増進とまちづくり(市街地の活性化)の「二兎(にと)」を追う動きはさまざまな自治体で見られるが、市民と一緒に進める「現場主義」の同市の取り組みは、大いに参考になろう。8月前期の「社説拝見」は、西アフリカで感染が拡大しているエボラ出血熱や、タイの代理出産問題、牛丼チェーン「すき家」の違法長時間労働問題などをめぐる各紙の論調を紹介した。

【9月5日号】 学童保育の実施状況に関する全国学童保育連絡協議会の今年の調査結果がまとまった。施設数、入所児童数は年々増えているものの、入所を希望しても入れない待機児童も増加。また、施設の大規模化が進んでいる実態も明らかになった(調査・統計「学童保育調査 入所児童数、90万人超え」)。STAP細胞をめぐる論文不正問題で、理化学研究所が検証実験の中間報告を発表。万能性を示す現象は検出されなかったという。併せて、発生・再生科学総合研究センターの規模を半減し、センター長を交代させるなどの再発防止策を発表した。検証実験は来年3月末まで続けられる(特集「STAP細胞 STAP示す現象、検出せず」)。「地域を支える」は、人口流出と高齢化が進む愛媛県愛南町で、障害者の就労促進と地域活性化を図るため、さまざまな活動を展開しているNPO法人「ハートinハートなんぐん市場」を紹介する。研修医として町に来た医師を中心に、十数年かけて障害者の雇用確保と地域振興の道を模索し、活動を広げてきたというから心強い。

厚生福祉表紙 地方行政とは

税務経理

【9月2日号】 ニュース詳報は、契約ルールなどに関する民法改正の動向を取り上げた。法定利率を現行5%から3%に引き下げ、その後3年に一度、実勢に合わせて見直す方式を導入するという。銀行に大金を預けていても1%にも及ばない利子しかつかない昨今、3%でもどこの国の話かと思うが、やっと改正に動きだす。「私の苦心」は、宮崎市納税管理課を紹介。滞納額を抑えるため、少額分納や安易な延滞金減免などをやめ、整理の進行管理を徹底することは、すべて法律に立ち返らせる作業だったという。差し押さえや公売など、法に基づいて取り組むことの重要性を力説していて、明快だ。全国特集「都道府県・政令市の2013年度税収決算見込みと特色」は、東京都、神奈川県、滋賀県、大阪府を掲載した。

【9月5日号】 「私の苦心」は、大分県豊後高田市の税務課納税係を紹介。「昭和の町」として、昭和30年代の町並みを復活させて人気を博している同市だが、昔ながらの訪問徴税中心のやり方では徴収率が次第に低下していたため、08年から(1)職員の意識改革(2)進行管理(3)現年課税分の滞納整理─の3点で組織運営の見直しに取り組んだところ、徴収率も反転。かつて納税係は、職員が行きたくない職場のトップ3入りしていたが、意識改革を通じて、滞納を許さない責任感ある人材に成長しているという。今では徴収率県下1位を目標に胸を張って取り組んでいるようだ。「ぷろふぃる」欄では、岡本忍熊本国税局長を紹介した。都道府県・政令市の税収決算見込みは、さいたま市と岡山市を掲載している。

税務経理表紙 地方行政とは

金融財政ビジネス

【9月1日号】 「地域へのばらまきにならないために」と題して、地域の活性化についての記事を掲載した。筆者は(1)全ての地域を活性化するのは無理(2)時には地元の意向に反することをした方が、長期的には地域のためになる場合がある─などと述べている。特に(2)については、過疎地の集約化を例に「住民に合わせてサービスを提供する」のではなく、「サービスが提供しやすい地域に住民が移動する」方がずっと効率的であるという。詳細は本誌で。

【9月4日号】 「低調な世界貿易、国内回帰が続く米国」と題して、日本の輸出が増えてこない背景を探った。世界貿易が低調な理由としては、世界経済の名目成長率が下がってきていることがあり、地域別に見ると欧米の輸入量の伸び率が低下しているという。特に米国については、シェールガス革命の影響などで、製造業の国内回帰が進んでいると分析している。

金融財政ビジネス表紙 地方行政とは