早読み行政誌

正当な指導かパワハラか(2014年9月8日〜12日号)

地方行政

【9月8日号】 日本人は、独特の災害観を持つという。廣井脩元東京大教授は、その例として、災害は人間の力を超越した天の意思によって生じると見なす「天譴(てんけん)論」、災害で生きるか死ぬかはその人の運命によって決まるという「運命論」、災害を科学的に考えるよりも心構えを強調し、最終的には神仏に依存するようになる「精神主義」を挙げた。しかし、これらの災害観には「人智を尽くして災害を防ぐという真摯(しんし)な努力を放棄ないし軽視することにつながりかねない」という指摘もある。災害の経験を「水に流す」のではなく、過去から学ぶことが必要だ。月曜連載「地域防災最前線」第63回は、過去の大災害から得た教訓を継承し、将来の災害対応に役立てることを目的に設置された、政府の中央防災会議専門調査会の報告のエッセンスを紹介する。第1回の今回は1923年の関東大震災。現在に通じる問題点も浮かび上がる。

【9月11日号】 2012年度の統計では、パワーハラスメントを事由とする個別労働紛争相談件数が5万1670件に上り、10年前の約7.8倍に増加、解雇の5万1515件を超えるまでになった。同じハラスメント(嫌がらせ)でも、セクハラは男女雇用機会均等法で具体的に禁止され、その行為を正当化する理由も存在しない。しかし、パワハラにはいまだ法的な規制はなく、指導の境界線がはっきりしないとの反論や、ゆとり世代の叱られた経験が少ない若者が、職場での正当な指導をパワハラと曲解しているにすぎないという意見がある。さまざまな議論がある中で、今後、公務職場でどのようにパワハラ対策を講じていくべきなのか考える。筆者が提示するパワハラの3タイプとタイプ別の対策は、あらゆる職場で役立ちそうだ(木曜隔週連載「公務員講座」第19回「パワーハラスメント対策」)。

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内外教育

【9月12日号】 昨年12月、日本の風土の中で独自に発達した「和食」が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された。だが、手放しで喜べる状況ではないようだ。インタビュー企画「あすの教育」には、登録に向けた農林水産省の専門家検討会で会長を務め、現在は「『和食』文化の保護・継承国民会議」(和食会議)のトップを務める熊倉功夫静岡文化芸術大学学長が登場。「今、和食は危機的状況にある」と警鐘を鳴らす熊倉学長に、和食を守っていく上での教育の重要性を聞いた。

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厚生福祉

【9月9日号】 特集「サ高住の現状と課題」15回目は、サービス関連の運営方針や職員体制について。具体的な考え方を示した厚生労働省と国土交通省の2013年の通知を見た後、実際の自治体の運用例として、滋賀、群馬、香川、神奈川各県の指針の内容を点検する。「地域を支える」は、愛知県の特養「せんねん村」を紹介。「施設」ではなく自宅の延長として最期まで過ごしてもらえるよう、起床時間も食事の時間も自由で、深夜・早朝以外は施錠しない。固定スタッフが少人数の入所者のケアをすることで、人間関係の構築にも力を入れる。一人ひとりとしっかり向き合って、その人に合ったケアを提供する。どの施設もこうあってほしいと思わせる内容だ。

【9月12日号】 年を取っても住み慣れた地域でできる限り元気で安心して暮らせるための「地域包括ケアシステム」の構築が急がれている。いくつか参考となる先進例があり、その一つ「柏プロジェクト」に中心的に関わっている東京大学高齢社会総合研究機構特任教授、辻哲夫氏の新連載「地域包括ケアのすすめ」がスタートした。プロジェクトの具体的な内容を交えながら、地域包括ケアの進め方を分かりやすく紹介していく。乞うご期待。地域で幅広く患者を診る「総合医」「家庭医」の重要性が高まる中、福岡県医師会は、地域医療に貢献する医師を認定する「福岡県医師会認定総合医(新かかりつけ医)」制度を創設した。都道府県医師会がかかりつけ医の認定制度を設けるのは初めてという(「かかりつけ医、独自で認定」)。70年ぶりに国内感染が確認されたデング熱は、当初複数の人の感染が見つかった代々木公園以外でも感染者がいることが分かった。厚労省や自治体は、緊急対策会議の開催や、公園の閉鎖、蚊の駆除・調査など対応に追われた(特集「デング熱 代々木以外で2人目」)。「地域を支える」は、松江市の鹿島病院を紹介する。中で何が行われているか分からない「謎の老人病院」と呼ばれていたのが、病院改革により、患者満足度の高い病院へと変貌を遂げたそうだ。

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税務経理

【9月9日号】 総務省がまとめた2013年度と道府県税徴収実績について記事と資料を掲載した。景気回復を背景に、収入総額は前年度比4.4%増の14兆4298億7500万円。法人事業税13.6%増、個人府県民税6.6%増などの伸びが目立つが、興味深いのは証券優遇税制が13年末に終了する前の駆け込み売買により、株式等譲渡所得割が10.5倍、1980億2200万円の大幅増となったことだ。連載中の自治体別税収決算見込みの報告を見ても、同税目のおよその増収額は東京都367億円、愛知県189億円などと巨額に上り、配当割との合算で神奈川県232億円、大阪府226億円に達する。愛媛県でも15億円の増収となるなど、各自治体に相当な臨時収入をもたらしており、それぞれこの財源をどのように活用するか見守りたい。また、これらは株式売却益の地方課税分3%に相当する額であり、人ごととはいえ売却益自体の行方も気になるところだ。また、各省の15年度予算概算要求が8月末で出そろったことを踏まえ、「予算編成が始動」と題した解説記事(3回連載)がスタートしたほか、第2次安倍改造内閣発足を受けた税財政運営の課題をまとめた。「ぷろふぃる」欄は、藤田利彦東京国税局長が登場。全国特集「都道府県・政令市の2013年度税収決算見込みと特色」は、岐阜県、浜松市を掲載した。「私の苦心」には、北海道十勝総合振興局の納税課を紹介した。

【9月12日号】 「私の苦心」は、福島県喜多方市の税務課を紹介。滞納繰越額がじりじりと増える中で、差し押さえの早期着手などに取り組んだがなかなか成果が見えない。そこで妥協しない姿勢で知られた県税一筋36年という県税OBを徴収指導員として迎えたところ、滞納額を減少に転じさせることができたという。「やる気の法則」というものを紹介しており、嫌々ながらやる仕事の効率を1とすると、納得して行う場合はその1.6倍に、自ら率先して行う場合はさらにその1.6倍=2.56倍にもなるという。職員からいかにやる気を引き出せるか、最後のカギはそこにあるようだ。「ぷろふぃる」欄には中尾睦福岡国税局長が登場。都道府県・政令市の税収決算見込みは、宮城県、福岡県を掲載している。

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金融財政ビジネス

【9月8日号】 「中国の新シルクロード構想」と題して、中国が取り組む「陸」と「海」の新シルクロード構想を解説する記事を掲載した。同構想の背景にはさまざまな政治安全保障面、経済面での思惑がある一方、当然のことではあるが、関係国には期待と懸念が生まれている。詳細は本誌で。

【9月11日号】 「改めて消費税について考える」と題して、消費税率をさらに10%に引き上げるべきかどうかを探った。筆者は「消費税をめぐる議論はこれからますます重要な局面を迎える。ぜひ、冷静な議論を展開し、税制の運営に誤りなきを期してほしいものだ」と述べている。

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