早読み行政誌

バブル崩壊と少子化と相続(2014年9月29日〜10月3日号)

地方行政

【9月29日号】 過去の被災経験から教訓を読み取る月曜連載「地域防災最前線」(65)の「災害教訓の継承」シリーズ。今回は、室戸台風、枕崎台風とともに「昭和の三大台風」と呼ばれる1959年の伊勢湾台風を取り上げる。伊勢湾台風では、高潮によって被害が拡大し、愛知・三重両県だけで4300人近い犠牲者が出た。高潮災害危険地帯であると住民に周知されていなかったことが、災害の拡大要因になったとも指摘され、筆者は「地域の災害危険度を正しく伝えることは防災の重要な一歩」だと強調する。ところでこの台風で、伊勢湾に面した三重県楠町(現四日市市)は、町内の大半が浸水しながら、死傷者がゼロだったという。背景には、日ごろから住民に対し避難と水防の説明と訓練に努め、過去の台風の教訓を生かして堤防の増強に当たった当時の助役の存在が大きかったといわれる。筆者は「防災対策においては、やはり自治体職員の役割が非常に大きいという実例」と、この助役の先見性をたたえ、貴重な教訓とするよう訴えている。

【10月2日号】 業務を進める上で必要不可欠な会議。一般的に業務のかなりの時間を占めるだけに、いかに効率良く運営するかが業務全体の成否に大きな影響を与える。しかし、会議の運営方法に問題があったとしても、真正面から異を唱えるのは難しいもの。会議の在り方に疑問を持ちつつも、「約束ごと」と甘受している人も少なくないのではないだろうか。木曜隔週連載「公務員講座」(20)は、「会議のイノベーション」と題し、会議を効果的に進める方法について考える。上司に突然招集され継続していた仕事を中断させられる、いつ終わるか分からない、参加者がむやみに多い、儀式化している、資料がやたらと多いなど、問題のある会議のパターン別に、改善方策を提示している。会議というツールを適正に活用するためのアイデアの数々は、今すぐにでも役立ちそうだ。

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内外教育

【9月30日号】 第29回時事通信社「教育奨励賞」(文部科学省後援)の受賞校が29日に発表され、今号はその特集号。最高賞に当たる「優秀賞・文部科学大臣賞」のほか、「優秀賞」「特別賞」(各副賞100万円)に選ばれた計3校の実践リポートを掲載している。教育の今日的課題にそれぞれ取り組んでいる各校のリポートは、読み応え十分。日本の学校教育の精華にぜひ触れていただきたい。

【10月3日号】 「校長が身につけるべきマネジメント能力とは何か。それは何よりも強いリーダーシップであり、コミュニケーション力であると言える。まずリーダーシップから話を始めよう」─。今号から、奈良市教育委員長を務める杉江雅彦同志社大学名誉教授による「校長が変われば学校も変わる」をお届けする。3回にわたる連載では、学校経営を企業のそれと比較しながら、校長のマネジメント能力、つまりリーダーシップとコミュニケーション力を強化するための方策について解説してもらう。お楽しみに。

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厚生福祉

【9月30日号】 佐賀市で9月、政府と県が主催する「輝く女性応援会議in佐賀」が開かれた。全国6カ所で開催されたうちの一つで、女性の活躍を掲げる第二次安倍改造内閣が発足したばかりのタイミング。政府側からは内閣府男女共同参画局の武川恵子局長が講演、各界で活躍する「輝く女性」と、子育て支援に熱心な企業の経営者ら各4人が登壇して体験や取り組みを語り、意見を交わした(特集「意識・環境の課題続々」)。「地域を支える」は、兵庫県立リハビリテーション中央病院を紹介する。数少ないリハビリの専門施設。近年は、腕の筋肉が発する微弱な電気信号で手先を動かすことのできる「筋電義手」の普及に力を入れている。事故などで手を失った人だけでなく、先天的に手がない障害を持つ人の社会参加の可能性が広がるという。「ワンコイン健診の現場から」はスーダン訪問記の1回目。スーダンで医療活動を行うNPOの医師を訪ねた際のリポートで、同国の生活事情、医療事情を紹介しながら、セルフ健康チェック事業の展開の可能性を探っていく。

【10月3日号】 特集「サ高住の現状と課題」17回目は、地方自治体がサ高住整備に独自の補助金制度を設けている例として、千葉県、熊本県、福井県、東京都のケースを取り上げた。また、大阪府は入居者の家賃負担を軽減するための補助金を導入しているという。約70年ぶりの国内感染が確認されてから続々と患者が見つかっているデング熱。重篤化することはまれだが、一度感染した人が再びかかると重症になることが多いという(「再感染で重症に」)。「地域を支える」は、福井市の認知症カフェ「心愛(ここあ)」を紹介する。軽度の認知症患者やその家族が気軽に足を運べる場所として、昨年9月にオープンした。利用者はお茶やコーヒーを飲みながら、スタッフに悩みを相談したり、利用者同士コミュニケーションしたり、趣味に興じたりと自由に過ごす。症状の軽い人たちの重要な「居場所」だ。9月前期の「社説拝見」は世界初のiPS臨床研究、デング熱やエボラ出血熱など感染症対策をめぐる各紙の論調を紹介した。

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税務経理

【9月30日号】 巻頭言「フォーラム」欄で、元政府税制調査会長の石弘光一橋大名誉教授が来年1月からの相続税増税について論じている。基礎控除引き下げにより課税対象者が都心部では2倍程度に増える上、課税額も重くなるため不安に思う人は多いが、石氏は「今回の相続税増税は必要なもの」と断言する。理由として(1)バブル崩壊後に激化した所得格差の是正のため相続税は不可欠(2)介護の社会化で子どもの扶養義務が薄れた(3)少子化の進行に伴い相続人数は減少し、富の偏在傾向が高まる─などを挙げている。ごもっともではあるが、改めて課題となるのは、納税者が「これは必要な負担だ」と納得できるような、将来の安心を確保できる政策を政権が示すことだろう。「私の苦心」は、北海道上川総合振興局の課税課を紹介。「ぷろふぃる」欄は、関東信越国税局長の川上尚貴氏が登場。全国特集「都道府県・政令市の2013年度税収決算見込みと特色」は、千葉県、山梨県、長野県、相模原市を掲載している。

【10月3日号】 2015年度予算概算要求がまとまったのを受け、恒例の特集「主要省庁別に見た税制改正要望」が始まった。3回連載の予定で、初回は総務省と環境省を掲載した。巻頭言「フォーラム」欄では、片山善博慶応大教授が再びふるさと納税制度を取り上げた。片山氏は、同制度で寄付をした人に多くの自治体が豪華な「見返り品」を贈っていることに疑義を唱えているが、ふるさと創生を政策の柱に掲げ始めた安倍政権は、ふるさと納税の限度額を引き上げる構えだ。真面目な納税者が住民税を1年分前納しても何の見返りもないことを考えれば、見返り期待でのふるさと納税との差は拡大する。そこで片山氏は同制度による寄付額を基準財政需要に算入して、地方交付税の調整に反映することで不公平感を解消するよう提案している。「私の苦心」は、さいたま市債権整理推進部の収納対策課を紹介。「ぷろふぃる」欄は、仙台国税局長の川嶋真氏が登場。都道府県・政令市の13年度税収決算見込みは、兵庫県、北九州市を掲載した。

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金融財政ビジネス

【9月29日号】 「『物価上昇』は本物か」と題して、現在の物価上昇傾向について解説する記事を掲載した。政府が発表する消費者物価指数などが上昇している一方、依然として下落傾向を示すデータもある。この違いはどこから生まれ、今後はどうなるのか。詳細は本誌で。

10月2日号】 「『想定内』ではなかった消費増税の影響」と題して、消費税率の引き上げを受けた日本経済の現状を分析する記事を掲載した。2014年4〜6月期の実質GDP(国内総生産)成長率は前期比1・8%減(年率換算7・1%減)となり、深刻な落ち込みとなった。筆者は「7〜9月期に回復する可能性も低いと見込まれる」と予想した上で、こうした状況においては、政府による15年度の財政健全化についての目標を達成する可能性は低いと指摘する。

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